ゲロとクソにまみれた掃き溜め

君を忘れたくないから、君を赦しはしないよ

美貌録(途中まで)

 しまった。サボりすぎてかなりの数が溜まってしまった。いや、よく考えると最近までは本当に多忙だった。
 俺は10時間は寝ないとぶっ壊れてくるクソスペックな人間なんだけど、ずっと4~5時間ぐらいしか寝ていなかった。割と寝てるじゃんとか言わないで。俺はこれで病んでくるの。脳の回転が速くなり過ぎて。おまけにその速度でも起きてる時間ずっと考え事と作業が溜まっているという恐ろしい状況。
 でも思うに、考え事なんてものは寝ているうちに勝手に脳がデフラグしてくれるぐらいが丁度いいもので、悶々してる暇あったら暖かいミルクでも飲んで毛布に包まりながら牧草の匂いを思い出して寝た方がいいんだ。あ、この話長くなる止めよう。

 2017/09/28
 【両国無法地帯】
 Ghetto Chapter67
 「"キレたら人格変わる"って、誰でもそうでしょ(笑)」
 1.RUST
 2.MADARA
 3.悪童の乖
 4.ORPHAN
 5.OIL
 6.BLACK

 この日は僕と乖離。の新潟時代からの友達、吉田雅志が両国殴り込み。てっきり誰かのツテを辿ってかと思ったら、本当に単身殴り込みだったらしい。Ghetto目当てで。僕はたまげた。
 とはいえ、ステージに立てばそんなことはお互い一切関係が無い。しっかり敵のつもりでライブを見たし、演るときはフロアにいる一人の人間としか写らなかった。
 因みに僕は、PAPAPAのボーカルの人みたいな嫌でも目に付くのは除いて、ステージに立ってるとき誰かを特別視したことは無いです。多分今までもこれからも永久に無い。皆特別だもん。特別なクソ!綺麗なクソ!見事な一本クソ!クソクン!(睡眠不足の表れ)
 Ghettoのライブは、確か久々にノーMCだったんだけど、それが良い方に作用するようなライブだったと思う。
 MCするのとしないのは本当に気紛れというか、ライブ中の鳩正義次第なので、事前に撃ち合わせしたのと違ったりして乖離。と川サキまで騙すことがままある。本当にごめん……今日はMCしないよっていうのは、そのときは真心込めて本気で言ってるんだ……グスン。

 ライブ見てて、うわーすごーいと思ったのは小倉”モッフィー”北斗さん。実は前弾き語りでぶつかってて対バン2回目なんですけど、ややこしいから「初めまして」にした! 僕そういう人! 僕だけが覚えてる! 皆記憶喪失! 好き!(睡眠不足の表れ)
 三条で見たことある、こういう人、リーゼントの……って思ってたら、お弟子さんのような感じだったそうです。狭いな世界!
 とにかくアコギの音がでっかい。でっかいし音色カッコいい。打楽器みたい。聞けば元ドラマーだったそうで、道理で言葉やギターがグルービーなんだなぁ、と納得した。
 なんというか言葉が青臭くて怒(ど)ストレートなんだけど、いい感じに体重が乗っててスパコォンって身体を衝撃波が突き抜けるパンチのような……「Wow!」って感じです。江戸時代の人間でもWow! って言うと思う。
 貫禄あるのにあんまり歳離れてないことにビックリしました。まぁ年上だと思われてましたけど。大丈夫。全然平気。うん。ぼくもかんろくあるもん。ね。

 PUNiKはドラムのオサムさんが来なくて(なんと最後まで来なかった)、三人編成でやってた。これは苦しかっただろうなぁ……。クビだクビだ! ライブ来ないのは有り得ねえよ! って言われてて。他人事だから笑っちゃうのはあるんだけど、やっぱりちょっと寂しいなぁ。あの四人でワイワイやってるの見るの好きだったもん。
 まぁライブに来ないのは確かに有り得ないんだけど、実は最近遊びに行ったライブでも見たなぁ、それ……。
 バンドマン、しっかりしような。ライブしないバンドマンなんて死んでるも同然なんだぜ、それはさすがに。お願いだから生きようよ。

 で、吉田雅志のライブなんだけど。ここからはこのブログの「誰が読んでも、まぁ分かる」という一応の主義を曲げて、ごく私的な文章をつづることにする。宛名は無い。
 友達だからとかは関係無いので正直に書くと、ゆっくりだけど進歩はしてるなぁ、画期的なアンプ二台の使い方だなぁ、という感じ。
 やりたいようにやればいいと思うけど、昔から「ここさえ直ればなぁ……」というところが一切変わってない。それはでも、例えばYUKEとかTears of cameleoneにしてもそう。
 勿論皆やりたいことや長所は違うけど、「聴く人がいる、その人に届ける」という状況下を設けたら最低限のラインっていうのは必ずある。人による、なんていうのは遥か向こうの話。絶対的なラインがある。
 極端に言えば、チューニングがメッチャクチャなギターで演奏されて、「理解できない奴は耳が悪い、センスが無い」とか言うのと一緒。悪いのはお前の耳だ! 聞くワケねえよ! 辞めちまえ! と言う権利が金を払って見てる人にはある。
 僕自身人のことをどうこう言えるかというと全くそうではないけど、昔の自分が今の自分のライブを見て「ダッセェ」と思うことは滅多にしない。やっちまったときは、叱ってくれる人が今はいます。陳謝と感謝。
 なんだろうな。結局こういうのって環境なのかな。僕は嫌だな、そういうの。だって、僕は東京来て「へへーん俺東京でやってて成長してるぜバリバリだぜ東京進んでるぜ」なんてのは一ミリも無いよ。分かってると思うけど。
 むしろ新潟にいた頃貰った財産が今生きてるな、あの頃僕が学んだことは今僕の血となり肉となってるな、という気持ちが強い。
 気合だけじゃどうにもならないとき、自分に何が出来るんだろう。そのとき誰の顔を浮かべるんだろう。そのことを何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も毎朝毎昼毎晩ご飯どき用を足すとき寝る前ハゲるぐらい考えて欲しい。想像してほしい。そういう場面を迎えて欲しい。迎えられるように周りを動かして欲しい。そのための気合がまずいるね。そして説得力が。
 そして気合だけじゃどうにもならないとき、どうするか。
 気合です。
 愛してるよ僕の友達。

 2017/10/20
 【両国無法地帯】
 Ghetto Chapter68
 「悪気が無ければ殺してもいいんだろ?」
 エクストリームセットリスト:
 1.RIVER'S EDGE
 2.MADARA
 3.OIL
 4.RUST
 5.BLACK
 6.ORPHAN

 ええと、この日はマレーシアからFAZZっていうバンドを迎えて。地理に疎いので「マレーシア?この間のネパール(Kanta dAb dAb)みたいな感じ……?」と思ってたら全然違った。そりゃそうだ。
 こう、なんだろ、キャバレーで演奏してそうな、ジャズとゆったりしたファンクを混ぜたような……R&B? 違うよなぁ。AOR、うん、AORだな。
 うん、その、全然好きじゃなかった……というか良さが分からなかった。
 上手いんだろうケド、最低限のライン超えてるケド、むしろ「だから何なんだろう」っていう、まぁ、いいか。これこそ人による、って奴ですね。きっと。
 あと結構前から、アスカトタケシいいんじゃない! って思ってるんだけど、この日はフロアでオープンからスタートの間に路上スタイルでやってて。
 アスカ生声ちっちぇ! 逆にマイクの使い方上手いってことか!? とは思いましたね。
 ただアスカの背中の方で見てたんですけど、クルッて回って目が合った時しっかり見据えられてちょっとキュンとしました。
 研いでライブする人は皆本当に綺麗だね。研いでいるんだな、と嬉しくなったよ。

 Ghettoはこの日五弦と六弦が早いうちにぶっちぎれて、後半を四弦だけで乗り切るという神クソ業をこなしましたよ……。
 詳細は省くけど(本当にアウトなジョークを飛ばした)、MC以外は良かったです、って怒られちゃった。でも優勝も貰った。頑張る人大好きだって。うん、正直、頑張りました。Ghetto3人とも超頑張りました。あの二人いなかったらあの日に僕蒸発してると思う。物理的に。
 すみません、ちゃんとメンテナンスします……。

 2017/10/22(日)
 三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
 【Ask Carol(fromノルウェー)Japan Tour】
 Ghetto Chapter69
 「Digusting horror show」
 1.RIVER'S EDGE
 2.MADARA
 3.OIL
 4.RUST
 5.BLACK
 6.ORPHAN

 頼むリベンジさせてくれ! と二人にお願いして、前回と同じセットリストで挑みました。
 いやぁ六つも弦があるっていいよね……怖いもん無しだよ……と思ったら後半で一弦切れた。どうなってんだろうな全く?
 とはいえ面目躍如は出来たかな、激しい曲ばっかりやるのも(疲れるけど)気持ちいいね、ってことでやり切りました。気合入れすぎて演奏は少しバラついてしまったが。(というか、PAさんの音が良すぎて自分のヘタッピに気付く)
 久々のクロメは、僕「シアン」って曲が好きなんですけど、あれずっと勝手に五拍子だと勘違いしてて。「よーしこんな感じの曲作るぞう!!」と思いながらノリノリで聞いてた。普通にハチロクでしたね……。
 で、まぁ勘違いしたままでいいか、と思いながら次の日突貫で新曲作りました。五拍子の。
 トリのノルウェーのバンドは、うーん、悪くないんだけど肩透かしというか。なんなんだろ。
 そもそもこの日は台風も直撃してるし、出演も皆ウリャァッってやってるのに、なんか次にその熱が伝わらなくてさ。変な日だったんだよ。皆がっつりヤってるのに熱くならない。
 不思議だよなぁ。こういうことってあるんだね。でも分かる。勿論誰が悪いとか、そういうのは一切無かったよ。
 でも「こんなんでよく盛り上がれるなぁ、チャランポランな格好したあのオヤジ……」っていうのは思った。いや、いいことだよ、楽しんでる分には。

 2017/11/1
 両国SUNRIZE
 【両国SUNRIZE 8周年 初日!】
 Ghetto Chapter70
 「Re:Birth Day」
 1.OIL
 2.ORPHAN
 3.悪童の乖
 4.ペレストロイカ
 5.MADARA
 6.DAWN

 楽しかった! SUNRIZEの誕生日を最初から祝えて! やっぱり皆気合の入れ方が違ったよ。
 この辺りはねー、ライブの日程が詰まってたから3人が別個にセットリストを考えた。この日は僕。折角のSUNRIZE誕生日だから、初期からやってたGhettoの曲を中心にセレクトした。すっごい気持ちよかったなぁ。
 「いっつも池さんに『MCが……MCが……』って言われるけど、俺ここでしかこんなこと言わないし!」という、たまげた暴言をライブ中の鳩正義が吐くものだから、池さんに後で「MCも良かったです」って言われた。ごめんなたい……。
 いやでもこの日は本当、感謝の気持ちが爆発したなぁ。出鱈目に喋ったんだけど、MCもよく覚えてる。
 「今日はPAに岩田さんがいて、昔照明をよくやってくれた星野くんがキドクライアにいて、受付にさわちゃんと池さんとアライ先輩がいて、トイレでずっとポスターを目にしてたTEN-SINがいて、俺らを初めて他のライブハウスに連れて行ってくれたPUNiKがいて……ここは僕が好きな箱です!大好きなSUNRIZEです!」
 うーん、今思い出してもツンと来るな……更に後日、この日初めて両国のGhettoを見てくれたお客さんに「SUNRIZEではMCするんですね!」と突っ込まれてしまった。ハハハ……ま、まぁね……。
 余談:シレッとPUNiKのドラムが変わってたんですけど、メッチャ上手い人になってて正直笑った。オサムさん……。

 ただ、やっぱりイッパイイッパイだったんだろうなぁ、アスタケのことも名前入れるつもりだったのに名前がすっぽ抜けてしまってた。悔しい。両国に出演しだして、結構初期から度々対バンしてましたからね。MCで触れられなかった分、折角だからまたアスタケのこと書くよ。
 この日はオンステージってことで、やっぱりアスカはこのぐらい声聞こえた方がいいよ! って真っ先に思った。エヘ。
 どの曲が~、というよりやっぱり全体を通して楽しんでるなぁ、彼らのライブは。良い意味でいつもぼーっと見てて、タケシの足踏みとアコギにコツッて手の当たる音、アスカのスカートの裾とかをぼうっと聞いて見る。結構良い感じなんですよこれが。機械文明がまだ無い頃の青空と草原と風って感じ。バターを運ぶ馬車と運河とアーチ橋と水車と風車とお城とオカリナ。キュンキュン。(睡眠不足が哀れ)
 あれー僕超ライブ見てるなー、超思い出せるゾ。Ghettoも大概だけど、アスタケもステージ降りた時のギャップが凄いよね、人柄の。僕は好きです。
 12/5はそんなアスタケのレコ発に出させてもらいます。全力で祝ってやんよ。ライブは喋んないけど。(多分)

 駄目だー!! 疲れた!! まだ残ってるけど一旦ここで止めだ!! 適当に書くもんじゃねー!!

タイムテーブル公開の是非


 来る12月14日、漸く両国SUNRIZEでも企画が打てるということで、店長の池さんとも相談して、というか殆ど助力してもらってそれらしい形になってきた。
 俺という人間は頭でっかちで、始めたら早いけど何をやるにも腰が重い。あれこれと色んなパターンを考えて「あ、駄目か……」と煙草に火をつける悪癖がある。
 結果的に殆ど俺の我が侭を通す形になっていて、申し訳ないと思うところかもしれないが敢えて感謝の意ばかりを表したい。

 元々隠す方ではないけど、今回はタイムテーブル公開を全面に押し出そうと思ってる。
 結構東京に来てカルチャーショックを感じたのが、皆出演時間をハッキリ告知してること。
 新潟にいたときは全く気にしたことなかったから、「そういうもんなの!?」ってビックリした。自分のライブさえお知らせ出来りゃそれでいいんかい! なんて自分勝手なんだ! みたいに思ったりもした。
 まぁそれも本当に文化や生活、時間への考え方の違いというか、仕事終わりに駆けつける人への配慮であることが分かってからは気にしないようにしている。
 完全に納得してるかというと、今でもそういうわけではない。
 というか、そこまで考えずに「そういうもんだから」と思考停止してる奴も当たり前にいるから、そういうのはやっぱり「違う!」と俺は思う。
 「今日という一日を頭から見て欲しいけど……」という思いやりが文頭に見え隠れしながら告知してる人もいる。出し切るライブする人は大体透けてますね。そういうのはいいの。
 只の通常ブッキングでも箱の人が頭を捻りながら、こういう順番ならお互い刺激し合えるかも、お客さんが退屈しないかも、トイレや飲み物の注文もスムーズかも、と色んな事情をすり合わせて苦心した「只の通常ブッキング」を作ってるわけだ。
 それをね、例えば出演者にだけ配布されるタイムテーブルをバーンと勝手にSNSに掲示して「来てね!」って書いてるのを見たりすると、本当にむかっ腹が立ちますよ。巻き込むなよ! 対バンやスタッフのプライベートを勝手に晒すなよ! 裏事情の見せ方がダサい!
 こういうことに気付いたのも、自分で企画して一日の構成を考えてて「俺も含めて音楽家って奴ァ、ワガママ放題だな! 王子か! ハプスブルクか!」とプリプリしたからなんだけど。
 責任って人を育てますね。怒るとかは無いけど本ッ当にプリプリしますよ。心のツインテールお姫様がハンカチを噛みながら靴を飛ばす。習い事もサボる。
 嫌になっちゃうわ! セバスチャン紅茶を用意しなさい! プッチンプリンもよ!(お忍びで庶民に混じる遊びで知ったお菓子)

 何の話だっけ。
 ああ、そうそう、とはいえ誰もが多忙なデスマーチを闊歩するこの不景気、多忙の合間を縫って好きな音楽を浴びに来る人、それに報いようとする行為、それは凄く尊くて俺は応援したくなります。
 モノグサなりに、知ろうと思った人に情報が届くようにと靴の紐を締め直す日々です。まぁ今回は平日ですしね。

 自分がお客さんで好きなバンドばっかり出る日に遊びに行って、頭から見れるとなったらあまりタイムテーブルは知りたくないなぁ、と思う方。
 そういうときは演奏楽しみつつも、「次誰かな」って考えながら転換で出てきた機材や人で「あ、次あのバンドだ……!」ってドキドキするのが凄く好きだから。
 本当は皆それが理想で、当然叶えたいと思ってることは、勿論分かってるんだよね。いや、ハートで分かってきたというか。
 対バンが自分の好きなバンドだろうが全くの知らない他人だろうが気に入らん奴だろうが、俺はお客さんには頭から最後まで見て欲しい、出来れば。
 綺麗事だけど一緒に一日の空間を作りたい。それは歓声や拳を上げなくても、その場にいるだけでいいんだと思う。
 なんでもそうだけど、誰かのこと、ある場所、ある時期を思い出すときに俺は「もういないんだ」じゃなくて、「一緒にいたなぁ」と思いたいよ。
 勿論「もういないんだ」も俺のともだちだけど。

 ライブは音楽を聴く場ではあるけど、本当に聴くのは、耳を傾けているのは、いつも心の温度なんだよなぁ、とそれらしい言葉で締めておく。
 楽しみにしてよ。俺はもうワクワクしてるんだ。

トリックオアトリート


 明日は私の誕生日。
 だからきっと大切なことが起きるし、箪笥から怪獣が飛び出してこないし、枕元のペンギンのぬいぐるみが手拍子してくれるし、鉢から花火が上がって部屋中を光る粉が舞う。
 フローリングの隙間から煙が湧き上がると、それはランプの魔人のように毛むくじゃらの優しいモンスターたちになって、沢山のプレゼントを私にくれる。
 どれも可愛いリボンでラッピングしてあるから、あえて私はそれを一つも開けないでピラミッドみたいに積み上げてベッドにもぐりこむ。
 布団から羽毛が突風と共に吹き上がって、綿飴みたいに一塊になると、大きくて白いフクロウになって私の頭を撫でる。それに落ち着いた私は大好きなレコードを聴きながら眠りに落ちる。
 明日は私の誕生日。
 朝になれば、蝶が私の唇にとまって目が覚める。
 家の外は華やかなパレードが通っていて、空を色とりどりの風船が踊っている。
 近所の家には全部煙突が生えていて、そこから出る煙は輪っかで、徐々に大きくなって最終的にドーナツになってる。ストロベリーのチップが混じったオールドファッション。
 私は黒いワイドパンツとサスペンダーに着替えて街に出る。勿論チャップリンのように黒いステッキを忘れずに。
 耳の奥がキンとするような晴れやかな青空で、編隊飛行の戦闘機が放射状に広がっていく。
 小粒の雨が降るけど濡れたりはしない。近くまで落ちてくると、当たる前に丸いゴムボールみたいになって跳ね返るからだ。
 明日は私の誕生日。
 気分が良くなった私は、ずっと気になっていたけど素通りしていた喫茶店に入る。ウェリトンの眼鏡がよく似合う白い口髭を蓄えたお爺さんがマスターだ。お客さんは皆綺麗なアルビノで、各々が水玉模様の子豚を抱きかかえている。
 ブランチを取るナイフとフォークの音が涼やかで、それらの音はそのうちタップダンスを混ぜたリズミカルなワルツに変わる。
 私が頼んだスフレとタルトはタキシードを着たカンガルーが運んできてくれる。勿論とても美味しい。身震いするほどキメ細やかで甘いのに、後味がほんのり苦くて切なくなる。
 明日は私の誕生日。
 夜には風船や雨やドーナツや紅茶が全部泡になって弾けて、空に浮かんだお城に続く虹色のアーチになる。大きな兎たちが街を踏み潰しているのを見ながら、私はかぼちゃの馬車に乗ってアーチを渡る。
 城では布をかぶった幽霊がヘタッピなダンスを踊っている。王子様はいないけど素敵な骸骨が私の手を取る。目に青い炎が灯ってて、凄く情熱的なステップ。でも肝心なところで腕が取れちゃう。
 私はシンデレラじゃないからガラスの靴は履いてないし、魔法もとけたりはしない。日付も変わらない。

 明日は私の誕生日。
 だけど、鳩時計が零時を過ぎても何にも起こらない。
 ティンカーベルは私を連れ去ってはくれなかったし、ピーターパンは中年太りのおじさんになったし、ベッドのシーツは血が滲んで、睡眠薬がウィスキーに溶けきらずに、コップの底でスポンジみたいになってる。
 部屋の床は冷たくてカミソリを敷き詰めたよう。
 ベッドから降りた私の足の裏はずたずたになって、部屋中が真っ赤に染まる。どす黒くて泥のようで、本当に汚い、鮮やかさの欠片もない血の色。
 外はずっとバケツをひっくり返したような土砂降りで、部屋は薄暗くて埃っぽくて、黄色い回転ダイヤル式電話機が鳴り続けている。
 私はその受話器を取ろうとするのに、部屋のどこを見ても、家のどこを見ても、私のどこを見ても見つからない。
 とても大事な人から、かかっているその電話……。
 思い出した。
 明日はパパが帰ってくる日だ。
 きっとお土産を持ってくるだろう。大きなダッフィーをおねだりしたけど、きっとパパのことだから違いが分からずにテディベアを買ってくる。でも私はそれでいい。
 だって明日は私の誕生日だから。

Parachute Girl

 「あんまりそんな目で世界を見てはいけないよ」
 「そんな、赤ん坊のように周りを見ていると、そのうち気が狂ってしまうよ」
 「誰も彼もそのうち、”そのまま”って視点を捨てるんだ。そうしないと第三次世界大戦”平和”を生き残れないからね」
 「林檎の赤い色はね、”赤いから赤い”んだよ。決して、花火やポストを見た時に林檎のような赤だとか、そんな風に考えてはいけない」
 「少しずつ、少しずつ視野を狭くして、黒ーい輪っかを小さくして、景色の一切から、文字しか理解できないようにするんだ」
 「そして最後には全部真っ黒になって、その中でぽっかり浮かんでるものがあるんだ」
 「それは何のロマンチズムにも浸らないものだよ、ただの一つの風船が飛んでるだけ」
 「その風船は上までいってはじけて、そこでお仕舞」
 「夢に色は無いんだ」
 「夢に色は無いんだ」
 「夢に色は無いんだ」
 「ゆゆめめににいいろろははなないいんんだだ」

 今日の天気は晴れ時々女の子。真っ逆さまに落ちてくる。
 不思議と一緒に落ちてくる。トマトのように弾け飛ぶ。街は真っ赤に染まってく。
 ミサの十字架に突き刺さる。こぼれた腸がイルミネイション。
 赤いから赤い腸の色。

 「君は詩を書いた方がいい、歌を歌ったほうがいいよ」
 「でもね、時々考える。伝わるって悲劇だよね」
 「もう慣れっこでしょ?」
 「皆そうなんだよ、”この人自分の事を言ってるんだ”って思うものだよ」
 「それでね、実はそうじゃないって分かると今度は怒るんだよ」
 「君に自分のことを考えていて欲しいんだ」
 「ありきたりな存在のくせに、君が人生で初めて見るタイプであってほしいんだ」

 吐息の嘘つきめ。
 きっとお前は嘘つきだったんだ。
 きっとお前は嘘つきだったんだ。
 林檎はいつまで経っても赤かったり青かったりするじゃないか。
 急に泣きたくなりました。

Split Soil



 インシデントが脳内に常駐ガンジャ好きのLOVE&PEACEは苛々が丸見えでクソウザい、半端な葉っぱの煙が臭い地下室、写真の現像赤い煙、何度も同じ話それさっきも聞いた。
 頭がぐらんぐらん眠剤中毒が一番平和、地面からちょっと浮く方が平和、でもロヒプノールのあんたの声甘くて嫌い、赤いラインと白いコーク、ケミカルウォッシュのカーテン何度も頬ずり、ちょっと出た。
 3万円いつ返そう、いつでもいいとあなたは言う、日向ぼっこで膝枕、ブッダの鼻歌、真鍮のアクセサリー手の中で弄んでアソコに入れるとレレレ、火をつけて登校旗振り回したら世界だって爆発して塗り変わると思ったわ。
 アンダルシアに行きましょう、キャンピングカーの中でピザ食べよう、でもチーズ切らしてアコギの弦は3と4と5しか無い、でもそれでいいんだって笑ってよ、顔がシリコンで出来てる、胸の奥までこのしこりはずっと続いていて、肋骨の隙間にカッターの刃を押し当てて脈打つたびに少し押し返してくるのがいいんだ。
 トールキンの本の読みかけ、こんなの素面のうちだけど、マンチいって飯食ってるお前の顔は本当に醜いや、そんなにご飯が食べられるお前ってどういう神経してんだよ、死にたいのにご飯はおいちいね、サイコロステーキまた焦げたんだ……。
 酔っ払いの手ほどき、新興宗教の教祖がワンボックスカーの車上でチンポコしごいて神の声だって言ってる、ステレオからアニソンが爆音で流れてる、オニイチャンオニイチャンこれ催眠の奴だ、オニイチャンじんじんするの、気持ち悪いなクソ。
 事務所の裏口でさっきから喋ってるあの二人組、特に青いシャツの方、あれお前の話してるよきっと、その色みたいに血の気が引いてる、わーいつも土気色だ、ファンデーションのトーン少し落とした方がいいよ、下睫毛が長いのに損してるよ、ええ伸ばしたいの? 無理だよ。
 この線どこまで続くだろうね、なんだかアタシ飽きちゃった、えへはは太陽にエアガン全弾撃ちつくそう、太陽が爆発するまで僕達きっと生まれ変わることも出来ずにここでのたうちまわって不眠症、思考回路を盗むハッカー。
 子供の笑い声、子供の笑い声、子供の笑い声、雨、朝の雨、雨の中水玉の傘を振り回して人ごみの向こうに君は振り返らずに改札に消えました、さよならは言わないよ、きっとまた会えるからと赤いスーツケースを引き摺りながら行きました。
 邪悪だな、言い争う女達の邪悪だな、悪いのは俺なのに誰も責めないんだな、よかったーーー命拾いした、だって3万円返したくないんだもの、返すとか返さないとかいいじゃないか、どうせ痛んでるんだ、でもきっと君の一日は凄く充実してて、そういう日々にごめんって少し思うだけでした。
 青い蝶々、サナギ、蝶々……。