Category腸 1/5

鉄の華

 眩暈がした。空気はひび割れそうなほど乾いていて、ジェット機の音が耳鳴りのようにいつまでも鼓膜にこびりついた。 雨だったら泣けたのに、という歌を聴いていた。それはいつも自分が思っていたことだから。 でも僕は、珍しいほどの晴れ間で、それがどうしようもなく磨耗して消えていく自分そのものだと錯覚して泣きながら歩いた。 この道に「どうして泣いているの?」と問う人間はいなかった。 この道に「あそこで待ってい...

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Evergreen/Neverblue

 物事はとても深刻で、いつも脅かされていて、生態系は確実にこのままだと滅ぶのだろう。 なのに、おふざけみたいな出来事が水槽の中には蔓延してて、お祭り騒ぎをしながら品の無い婦女や、低俗な男たちがメッキの金属のような寝言を吐いて笑ってばかりいる。 本当に変える力を持った世代の大多数と、そいつらの持つ金は税金と金属の箱とダサい服と似合わない髪形に吸い取られている。 物知り顔で単語ばかりうず高く並べるバカ...

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生きていたって、仕方が無い。

 彼という人間はとても愚かで、人の神経を逆撫ですることにばかり長けていて、誰かの一瞬ばかりの笑顔を作りたいがばかりに、とても膨大なものを失う。 それは別の誰かの笑顔。 あの人がなんとなくコロッと手に入れる、容易に指先に転がり落ちてくる宝石を、彼は泥水をすすりながら、白い目を浴びながら、嘲笑を浴びながら手に入れて、なのに汚い爪で砕いてようやく得るもの、一瞬の笑い。 彼は黒い涙を流すのだ、これは目の周...

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Split Soil

 インシデントが脳内に常駐ガンジャ好きのLOVE&PEACEは苛々が丸見えでクソウザい、半端な葉っぱの煙が臭い地下室、写真の現像赤い煙、何度も同じ話それさっきも聞いた。 頭がぐらんぐらん眠剤中毒が一番平和、地面からちょっと浮く方が平和、でもロヒプノールのあんたの声甘くて嫌い、赤いラインと白いコーク、ケミカルウォッシュのカーテン何度も頬ずり、ちょっと出た。 3万円いつ返そう、いつでもいいとあなたは言...

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Wrong Number

「もしもし」「あ、あのさぁ、次の仕込みなんだけど」「あ?」「あれ? え、誰?」「誰だろうね」「あっ、あ、ネコたん? ごめん間違えた」「切っていいスか」「待って待って、え、あんさ、ネコって次来る?」「いや……」「最近来ないよね、どした?」「どうもしない。あー……そうだな、だってあそこの絨毯、気持ち悪いから」「え? どういうこと?」「なんかブヨブヨして。匂いも。えっと、つまりヤなこと思い出すんだよ」「ふー...

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