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11月の完成

 19歳。 錆の浮いた歯車は今日も空中をぶんぶんと輪を描いて飛び回り、小さな螺子が俺の頭に次々突き刺さる。「頭の螺子が足りないとか取れたとか言うけど、きっと私は刺さりすぎてると思うの」 紫色の空を流れる雲ばかり見ている貴方は、ちっとも様にならないことを言っていた。 この高架からは駅のホームも観覧車も車も空もよく見える。 優しい歌が聞きたくて、鼓膜を破壊するような音ばかり聴きたくなるのは何故だろう。...

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トリックオアトリート

 明日は私の誕生日。 だからきっと大切なことが起きるし、箪笥から怪獣が飛び出してこないし、枕元のペンギンのぬいぐるみが手拍子してくれるし、鉢から花火が上がって部屋中を光る粉が舞う。 フローリングの隙間から煙が湧き上がると、それはランプの魔人のように毛むくじゃらの優しいモンスターたちになって、沢山のプレゼントを私にくれる。 どれも可愛いリボンでラッピングしてあるから、あえて私はそれを一つも開けないで...

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Parachute Girl

 「あんまりそんな目で世界を見てはいけないよ」 「そんな、赤ん坊のように周りを見ていると、そのうち気が狂ってしまうよ」 「誰も彼もそのうち、”そのまま”って視点を捨てるんだ。そうしないと第三次世界大戦”平和”を生き残れないからね」 「林檎の赤い色はね、”赤いから赤い”んだよ。決して、花火やポストを見た時に林檎のような赤だとか、そんな風に考えてはいけない」 「少しずつ、少しずつ視野を狭くして、黒ーい輪っか...

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Call

 深夜の携帯のバイブレイションで目が覚めた。 その日は部屋に差し込む午後の風が気持ちよく、本を読んでいるうちにいつの間にか寝てしまっていた。物語の延長を夢でなぞっていたであろう心地いい感触が、僅かに頭に残っている。 呼び出しの名を見ることもなく、鳴り続ける下品なバイブの音に舌打ちをして俺は通話のボタンを押した。 「……遅いよ、出るのが……」 ひとしきり喚いたあとのような、がさついた声。携帯越しにこっち...

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紫煙/紫音

 「ジョイントくれよ……」 ヤニで完全にベタついた、ケツの穴より不潔な口で粘着質な音を立てながらタカが言う。 窓に何度も体当りする蛾の羽音がやけに耳障りだ。網戸は埃をかぶってクモの巣が張り、もはやこの部屋に家主はいないと主張するかのよう。 マンションの一階、煎餅布団の上で原因不明の腹痛に悶えながら、俺は枕元に置いたはずの水差しを探す。あるのはひっくり返った灰皿だけ。 部屋の隅でユミは一心不乱に携帯を...

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