パラシュート

このパラシュートは壊れてるから開かないんだ
俺はそのことに気付かないまま飛行機を飛び降りてしまった
ずっとずっと落ちて、地面はまだ見えないが
なんという絶望感だろう、と落ちることばかり考えて
落ちる快感さえ見失ったらきっと愚かなんだろう
人生は落ちていくものだ
転がりまわって落ちて砕けて、綺麗な破片になるのさ
飛行機が事故って飛び降りることさえ出来ない、そんな災難にはあってないから幸運だろ?
ところで次の墜落はいつになりそうだ?

地球を一周するのに4万キロ
あと何十週すればあなたに会える? あなたに近づける?
本当はとても近いのに何度も何度も同じところをぐるぐる回ってるんだ
俺ってバカだろう、でも別にいいんだ、轍がここに残るはずなんだ、それは希望だと思う、けど、ゴムの焦げ臭い匂いがする、そうだ、アイツは単車のブレーキをわざと壊してスリップして空中に飛んだんだった
それから
それからヘルメットごと首をへし折って、おお、空が地面じゃないか、ここは天国だ、きっともう一つの天国だよ、アナザー・ヘブンじゃないか、こんな近くにあったんだ、頭を逆さにするだけでよかったんだよ、別に首は縦についてる必要なんかないんだ、そうだろ? おすすめだからお前も首をへし折ったらいい、アイツは電話でそんなことを言ったが、そもそも別に俺の電話は鳴ってなかったし、携帯は電池切れしていた
温もりさえあれば生きてるだなんて情けないこと言うなよ、部屋中に広がるチューブに繋がれて、過酸素を肺にぶち込まれたまま生きてるなんてマネキンじゃないか、人間はマネキンだけど、マネキンになったらシリコンの立場がないじゃないか、マネキンは首も手首もくるくる公転して自体はどんどん悪化するよね
でもこの手は温もりを繋いでるはずなんだ、これだけなんだ、これだけなんだよ、たったこれだけ、何度も何度も肋骨へし折ってこれだけなんだよ、結局残るのはこれなんだ、あなたの手を引っ張って俺はどこへだって行くよ、幾夜の嵐と流星の雨をすり抜けてあなたを連れて行くよ、ところでここはどこだ? 鳥の眼球のカラスのガラスの青いグラスにトリロジーのアイデンティティーがフラジャイルのくだらない境界の向こう側にも呼び戻すあなたの黄泉の外れた俺の早とちり、ナターシャに花をあげたら?
仕方がないからあなたはナターシャになったら? 耐え難い憎しみを花に変えてあなたは墓にお花を添えたら? 碑文は冷たい夜に朝が来るまで待っててねと残酷なことでも書けばいいよ、とにかくあなたは死んだ、でも別に終わらない、あなたの心臓は俺の中にあって俺はいつまでだって歩くよ、それでいいじゃないか、歩くよ俺は、親指もくるぶしも腐って壊死してもげて腿が紅い調律になったって歩くよ、俺はどこへ行くんだっけ、手を引っ張るつもりがルーシーはどうした、ルーシーはどこへ行く、どうやってでもあなたの手は引っ張っていくぞ、この温もりがここに刻まれるたびに俺はバイタルが急上昇してパラシュートが壊れて何度だって気流とカマイタチに刻まれてどうやらここでおしまいなようだけど、心拍数が命の限りじゃないってことだけあなたもいい加減覚えてくれ
繋いでるはずなんだ、繋いでるはずだよ、俺は告げたろう? 今度はあなたの番で、別に何も期待はしてないけど、俺はとにかくもう折れる肋骨もなくなったからあとは深呼吸するだけ
スー、ハー
静かに

2009/12/12
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