02
2013

パラソル

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あの日は晴れてて、くたびれたアパートのベランダで青い空を見上げた
煙草の煙が舞い上がって遠くの入道雲と一体化していくのを見て、俺も煙草ならいいのにと思った
錆の匂いがする鉄柵にもたれかかって、ここから落っこちれば桜になれるか
殺してしまえと言ったのは俺だろう
あなたと俺によく似た子供にも会いたかったけどな
泣かない子供はみんな殺してしまえばいいんだ
生まれたときから自分が何かを知らない、そんな子供は

春先だった、春だった、、少し暑い日だった
あなたにあげたナイフの先端で肌を軽く突付いて
ぷっくり膨れ上がった血の粒をそれはまぁ綺麗だなと褒め称えたり
何が嘘だかもうよく分かんねーから、現実はとにかくクソッタレなんだ
夢の中で黒い人型の奴らに看取られながら体が動かなくって
人生は俺には長すぎたなとどっかの歌で聴いたことを思い出して
グッピーの死んだアクアリウムは水がもう濁り切ってて
あなたの子宮ってあんなだよね、あれはあなたの内側だったよね
なんだっていいけど首筋に汗掻いて、「夕立…」とあなたは静かに言った

部屋の隅に溜まった埃を手で払って、そこにうずくまるとこの部屋は独りでいるには酷く広かった
対角線上に置いたキャンドルは明るく輝いて、暖かそうだった
でもこの部屋には河が横切っていて
床にはカミソリが沢山敷き詰められていて
頭上にはいつ落ちるか分からないツララが沢山できてて
40万キロ離れてて
肌を突き刺すような強い冷風が吹いていて
鉄さえ溶かすような酸性雨が降り続けてるんだ
手にはマッチが何本かあるけど
歩いていくまでに使わなきゃ、裸の俺は凍え死んでしまう
そのうち皮膚が溶けて、むき出しの神経を風が強く打つだろう
気が狂いそうな痛みなんだそれは
酸素も薄いから、むせたら最後、そのまま止まらなくて肋骨まで折れてしまうんだ

血まみれになって着いた頃、キャンドルは燃え尽きていた
一本だけ残しておいたマッチを、必死でこすったら折れてしまった
それでも火をつけて、指先が火傷するのも構わずキャンドルの芯を炙った
焦げ臭い匂いがしただけで、永遠に、もう二度と火はつかないんだと知った
小さなその体を土に埋めて、俺はあなたの中のグッピーが大地の養分になることを願った

幼いだけで掟を破ってしまったら、生まれただけで罰を受けるんだってね
俺は知らなかったな
ただ、会いたかったな
あなたの魂はあの死んだグッピーに連れて逝かれたようだ
俺の魂は別にこの辺で淀んでる空気と変わらないね

ねぇ、知ってる?
未熟児用の棺桶って、ないからさ
大人用の棺桶を真ん中で半分にするんだ
だから、大人用の棺桶は角を取ってあるのに
未熟児用の棺桶って、角があるんだってね
角があるんだってさ

2009/12/08
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