単細胞

孤独は
自分で作ったものだ
ゴメンナサイとその手を突き出したら
そういうことだろう
そこを曲げると意味が分からないので
あなたはとにかく表面的には
他人に好かれる才能がある
そこを曲げると意味が分からないので
恋愛は才能だ
顔もセンスも性格も生まれも環境も遺伝子も趣味も嗜好も
すべては自分で決めることではなく、生まれ持ったものだ

彼女は次の停留所で降りるってさ
言いかけたことは、そのときには遅いから、飲み込んだ方がいい
彼女は次の夜には手首を切るってさ
言い忘れたことは、そのときには早いから、欲しいものを考えた
でもそれは悪い初夏に写真がさらわれた日だったので
今更だったと思い出して、駅のベンチで俺の肩を叩く彼女の手の方がか細かった

その言葉を言うってことは、全部壊れるかもしれないってことだ
そういう言葉を不意に言ってしまうことほど野暮なことはないから
よく考えてから言おうとするが、俺の体は俺のものではないようなので
本能とかに支配されるとしたいことだけするようになる
俺の命も愛も感情も夢も希望も未来も過去ももらい物なので
使い切ったらまた他人から奪うことでしか得られない
偽物だとかそういうものは後回しでいいから、自分で生産する必要があるが
その場限りのユーモアのために割に合わない対価を払いすぎてしまった
まるで借金苦で首の回らないどん底の犬のようにね
頑張って耐えるか、自己破産か、自殺か、ホームレスか、あとの選択肢は思いつかない
とりあえず今は返却までに余裕があるので
自分で作った孤独のスペースでたまに息継ぎをしているのだ

さっきの例えを引っ張るなら、お金の工面の仕方を教えてくれる人が欲しいのではなく
お金が欲しいのだ、これは言葉どおりでもあるが、大事なのはそんなことではない
腹が減ってるのに「空腹の誤魔化し方を教えましょう」と言われても納得は不可能だ
そのうち空腹を感じることさえ罪だと思いやしないだろうか
カウンセラーとは罪な商売だ、弱いものにつけこんでいるなと思う、救いたいと思うなら食べ物を差し出せばよいのだ
そのとき効果的な一言を添えるとかすればいい
でなければ、彼女はそんなに赤い傷を残すこともねえだろうと、冬の日に彼女の縮毛矯正をかけた髪に恐怖を覚えたりはしなかった

無論カウンセラーのせいだけではなく、あの場合は空腹に石を詰め込むような真似をした俺もきっと悪いんだろう
悪いんだろうと考えるだけで罪悪感は伴わないから
やっぱり俺は薄情だなと思い、薄情なのは生まれつきか後天的なものか考えるが
用無しに能無しではなんの意味も無い
本当にまぁ、冷たい男だなぁ、俺は
希望が宙に舞って落ちて砕けるのを哀しいと思うが
そもそも人の希望をそんな風にしてるのは俺なんだから
もしかして薄情どころか、人を傷つけるのが好きな悪意の権化かもしれない
何にせよ演じるのは楽だ、本物の俳優は俳優なんぞにならずに、現実でその演技力を活かしているのだろう
それもまた才能なのだ
生きるのにも才能がいるのだ
適正が無い人間は才能を磨く必要があるだろう

2009/09/05
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