枯渇

誰かと一緒にいればいるほど、心を奪われていきそうさ
でも初めから、俺の手持ちの手札なんて大した数じゃない
とっとと使い果たしたら、手放して降参のポーズをとるんだ
それが万歳に見えるって? そう、万歳してんだよ

飛行機が飛んでいく
そういえばここは飛行場だった
いいや違う、耳元で鬱陶しく蝿が飛んでいるだけさ
ゴオオオオ、ゴオオオ、ゴオオオオオ
青空に飛行機雲が刻まれている
だんだん広がって、曖昧に空に溶けていく
俺たちがばら撒いたものなんてあんなもんなんだ
長持ちなんてしやしない
だから消えないくらいに深く深く刻み込んで、溝ができてしまった

ハセガワさんはシャボン玉掴もうとして、屋根から飛んだらしいよ
空振って、頭割って、アル中みたいにいつも指が震えてるんだ
随分クレイジーでいかしてるぜ、自販機またぶっ壊すか?
煉瓦の壁もぶち壊すか?
蛇口をひねって逃げて、全部泥水に変えてしまうか?
俺たちはなんてバカだったんだろう、不能腐脳

また夏が来るんだ、あの狂って暑苦しい夏が来るんだ
そして馬鹿でかい花火を見るんだ
毎年見るが、いつ見ても違って見えるんだ、不思議なもんだろ
アレを見ると、バチバチと頭の中で脳細胞がスパークしてるのが分かる
瞳孔が開いて、心臓が爆発したような音が鼓膜を叩く
俺はアレになりたいんだ、分かるか?なぁ分かるだろう?
セミや太陽にごまかされてる場合じゃないんだよ、ここに光が来なくなる前に俺は花火になるべきなんだよ
火薬はどこだ、火種はどこだ?湿気てしまうんだ、早くすべきなんだよ
口に銜えた煙草で小さな満足してる場合じゃないんだよ
なぁアンドレア、君は花火見たこと無いだろ?
アンドレア、分かるか、花火なんだ、全部かき消すにはそれしかないんだ、ただ儚いだけじゃないものがそこにあるんだ、気づけよ、本当は知ってるだろ。言葉を捜して口を酸欠みたいにパクパクさせても、震える指先も、消えない切り傷も
なぁ知ってるんだろう?本当は分かってるんだろう?
みんな知ってるんだ、知らない振りしてるだけさ、そうしてるうちに本当に見えなくなってしまっただけさ、現代人の視力低下は深刻なのさ、運動しなきゃ心肺機能はすぐに落ちていくよ、その場所が無いと適当に嘆いておくのがスマートなんだ、本当にやりたきゃそんな場所はいくらでもあるんだろうにね

俺、四日前彼女が食べてたトマトになりたいんだ
またトマトの話か、妙なもんだな、別にトマト好きじゃないんだぜ
別に食われたいとかそういう、くだらない比喩でもないんだ
雫が垂れるんだ、あんなに水分あって、ああ、いいよなぁ、なんていうか、いいと思うんだな、それって、ねぇ、どうしようか
頭突きして鏡と額でも割っとけよ、きっとトマトみたいになれるぜ
ゴオオオ……
ゴオオオオオ……

2009/06/17

(※なんていうか、オチがしっかりしてますよね)
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