怨故辱新

 昔から、ちょっと変わった音楽や昔の音楽を愛好する奴とつるむことが多い。つるむっていうか、寄ってくる。
 類友ってことなのかもしれないけど、俺自身は特別ヘンテコな音楽を常に聞いてるわけではないし、さほど昔の音楽も聞かない。不思議だな。
 昔の音楽、とざっくり言っても、概ねの源流のビートルズ(ロック)や、セックスピストルズ(パンク)、ブラックサバス(オルタナ)、ピンクフロイド(プログレ)やレッドツェッペリン(ハードロック)辺りになるか。
 正直、そこらへんは真面目に聞いたことがない。あえて避けている。
 なんというか、そういう、時の試練を乗り越えて生き残ったものが素晴らしいものであるのは疑いの余地がなく、そこに頼った瞬間進歩は止まると思うのだよ。特に俺みたいなチンケな感性の持ち主は。
 そりゃあYesterdayとかStairway to heavenとか、Echoes、Paranoid、God save the queen、とかの金字塔的な曲は避けきれなかったし、それだけ聞いてもそれらが非常に優れていることは分かる。
 KinksやVelvet Underground、はっぴぃえんど辺りはセーフ。この違いね。
 特別、ビートルズだけは別次元で、洋楽を知らない奴だって知ってるわけじゃん。ロックの教科書とでも呼ぶべき存在で、ロックやるのに教科書読んでちゃあかんよな……と、個人的に距離を置いている。
 色んなしがらみやこだわりを捨てられる、あとはまた、新しいものが理解できなくなる年寄りになったときにでも聞けばいいと思っている。老後の楽しみ。

 最近の音楽嫌いなんだよね、と人に言われるとカチンとするというか、俺は比較的懐古主義だけど、それでも特に若い奴がそう言ってると「バカかおめーは」と頭ごなしに否定したくなるね。
 まだ時代の洗練を受けていない、今まさに生まれている有象無象から取り捨て選択する努力を放棄しているだけだろ、このクソおべんちゃらが、と。
 そういうときに容易に一昔前の知恵に飛びつく奴に新鋭のものは作れないし、そいつらが良さに気付く頃にはとっくに時代遅れ。俺はそういうのはゴメンだ。
 ネットが発達して色々聞けるようになって、おかしなことに、別に探そうと思えばどっかにあるものばかり皆が聞いていることに首を傾げるばかり。安心は恐ろしい。確信は恐ろしい。それにしか頼らなくなるからだ。より良い方法を探すことを忘れる。
 昔のものが良い、新しいものが受け入れられない、というのはこれはもうれっきとした脳の老化と解析されている。寄る年波に無理に逆らえとは言わないが、若いうちは色々聞いとくべきだ。

 この頃の歳になってようやく分かるが、基本的に人は自分の中にあるものしか受け入れられない。
 「聞いたことないけど、これ、いいね」っていうのは、すでに自分の中に漠然として要素が漂ってはいたが、それが形となって目の前に存在し認識できた時に「良い」と理解する。
 これは本来、先を越されてるわけだから悔しがるべきところなわけだ。喜んでもいいけどさ。
 例外が許されるのが若い頃、とりわけ脳が柔らかい十代で、「なんだかよく分からんが聞く」ってことが出来る、その体力がある時期だな。
 音楽ってのはふざけたもんで、なんだかよく分からんが聞いてるうちに、段々良くなってくるもんなんだわ。勿論どれだけ聞いても受け入れられないものも沢山あるが、その内の何割かは環境が良くなかったから、とも言える。

 ビートルズの話に戻るが、ビートルズが良いのは、もう当たり前なわけ。知名度、性能、功績、どれをとっても完璧。言うことなし。
 オノ・ヨーコのせいで解散したとか、いまだにぶちぶち言われてるが、コンポーザーのはしくれとしては、むしろ解散してくれて助かった。あのままほっといたら、今頃音楽でやれることがもっと減ってただろう。それぐらい恐ろしい先人だ。
 でもビートルズが好きって奴は嫌いだね。おっさん連中とか。
 ボブ・ディランが好きっていうおっさんも嫌いだね。
 ボブ・ディランは職業詩人だよ。詩を理解しろよな。哀愁とかブルージーとかバカなこと言ってる場合じゃねーぞ。
 ボブ・ディラン好きの間でも「ボブ歌下手すぎ」「癖強すぎ」ってのは常套句で、でも曲と詩がいいからカバーされるし、おまけに本家より聞きやすいから本家より売れたりする。それぐらいは理解したまえよ。
 ついでに言うとボブ・ディランはフォークシンガーじゃない。あれはプロテスト(政治的抗議)ソングだ。アコギとハーモニカのパンクなんだよ。
 それがなんだって「四畳半フォーク」に成り下がるわけ? こればっかりは日本人のセンスの無さには反吐が出る。ボブ・ディランは詩だ。詩を読め。全然意味分からんぞ。代表曲って呼ばれてる奴ほど何言ってるかさっぱり分からん。クラムボン並。詩だ。詩がいい。歌はキモい。マジボブ歌下手。調子のんなボブ。
 ビートルズの話だった。まぁビートルズもぶっちゃけて言うと詩だよ。それに加えてメロディや伴奏も抜群、ただ演奏だけが割と下手だけど、とにかく詩がいいから今でも愛されてるんだよ。これで詩が「うんこちんちん」とかだったら、間違いなくここまで語り継がれてないよ。「Let it be」だよ? 何ソレ。メッセージが雄大すぎる。正解じゃん。それ、否定できない奴じゃん。
 別にいーんだけどサ、そういう奴ってきっとなんかの間違いでカブキロックスが60年代に流行ってたら、カブキロックス最高とか言ってんじゃないの? まぁ間違ってもカブキロックスはどの時代でも流行らないけど。

 俺には昔の音楽はよく分からん。分かったふりして聞くのも嫌いだ。物事の本質なんて何も分からんオシャレ気取りが、オシャレ音楽聞いて「ジャミロクワイいいでしょ、マジ都会的サウンドだよね」って言ってるのとなんにも変わらん。
 自分が分からんから、クソガキとかクソオヤジに対しては「ホントに分かってんのか、コイツ」って疑ってる。
 無論本当に、ルーツとして60年代、50年代が馴染むって奴もいるし、そりゃ連れにいたからよく分かってんだが、そんなに多くはねーよ。やっぱポーズでしかないんやろなと。
 ただ、ルーツが古かろうと、音楽好きである以上新しいものの息吹は感じてないといかんね。こりゃ自分に言い聞かせてるんだけど。最近の流行の良さがちっとも分からん。というか、分かったためしがない。
 いつだってカッコよくて、流れを作ってきたのは、流されない奴だ。古いものに敬意を払い、自らのバックボーン、時代を噛み砕き、今を生きてる奴だ。今だよ今。未来も過去も、今に比べたらゴミだ。
 ここ、まさに今、それだけが真実さ。それすら危ういから、立ち止まってる場合ではないよ。
 信じなさい信じなさい。
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