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2014

その男、凶暴につき / HANA-BI

CATEGORYカルチャー
 北野監督処女作、「その男、凶暴につき」。秘めたる暴力性と光と影のコントラスト、絵画的美しさはすでにこのときから完成されていた。
 意外と話はコテコテの刑事もの。主人公の性格が後に継がれる「主演:北野武」の雛形ではある。が、それを除くと前半特筆するようなこともない。麻薬売人の死体が港で発見され、容疑者を片っ端から強引な手段でねじ伏せ、謎を暴いていく。
 北野エッセンスは後半につれて強まっていき、クライマックスは息も継がせない。残虐な美しさ。まさに「凶暴」だ。
 巧妙なシナリオではあるものの、脚本と北野のアイディアによる演出に、多少の乖離は否めないように思う。オチは特に、見た順番もあって「らしくないな」という感じがした。
 俺は刑事ものや時代劇の、やっぱり捕り物系が何故か尋常じゃないくらい嫌いなので、北野演じる我妻がここまで破天荒じゃなかったら、到底楽しめなかっただろう。(多分、大体がお約束で動いてるくせに、やたらシリアスな雰囲気出してんのが嫌いなんだと思う)
 北野映画全般に言えることだが、何がいいって、テンポが秀逸。何もかもが早い。速い、ではない。(座頭市は速い)
 安易な結びつけだが、スピード漫才や掛け合いに似た間が、対人での極端に少ない台詞と相まってカミソリのような切れ味を誇っている。気がする。
 あとテーマソングが珍妙で面白い。
 とにかく終盤の美しさには惚れ惚れする。これだよこれ。


 HANA-BI。日本で40年ぶりの金獅子賞がどうとか、そういうのは別にどーでもいいや。
 当たり前だが、俺は賞で映画を見ない。賞で言ったら、例えば「ショーシャンクの空に」はアカデミー取ってないし。同年のはフォレスト・ガンプが大体取った。どっちも素晴らしい映画だし、どっちが良い悪いでもない。たまたまだ。
 久石譲の音楽がほぼ極致に達しており、物語の随所を盛り上げまくっている。この映画に至っては大分ジブリっぽい。表題曲も勿論だが、オープニングの曲がかっこよくて好きだ。

 Angel

 この映画は既存の北野映画とかなり打って変わっており、まさに花火、写実的、写真的、絵画的表現を多用している。花火が打ちあがり、するすると上がっているシーンを極力廃し、「バッ」とまさに花開く瞬間を描いている。具体的にどこが、というより、全体的にそういう演出になっている。
 話の展開や構成も少し複雑になっており、割かしドラマチックだ。他のに比べればかなり脂肪を落としているが。
 絵画的といえばむしろそのままで、味のある点描画が劇中、何枚も差し込まれる。動物(犬やペンギン、トンボや人間)の顔が様々な華になっていたり、花火を見上げる少年家族だったり、武士が桜に四方八方囲まれていたり、雪を「雪」、光を「光」という漢字で表現して、その中心で真っ赤で大きく「自決」の二文字とか。
 これらの絵は、作中では撃たれて半身不随になった主人公の同僚が、家族にも逃げられて暇なので、趣味で描いたとされている。が、実際は北野自身が描いたものらしい。中々のものだ。
 俺は常々、絵というものは画力などクソの役にも立たず、あるのは執念ばかりと思っている。執念のある人は誰でも、暦のあるなし、技法のあるなしに関わらず良い絵を描く。「もののみかた」というものがあるのだ。
 結局のところ「HANA-BI」が何を指すのかは分からない。ひまわりなどの絵のことなのか、生き方なのか、死に様なのか、文字通り火薬の花火のことなのか。
 エンディングもよく分からない。察しはつくが、あくまで察しだ、もしかしたら違うかもしれない。分かるのはただ「HANA-BI」だということ。
 この映画は全力で「HANA-BI」だ。どこを切り取っても。それだけでいい。

 HANA-BI
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