パリ、テキサス / ライフ・イズ・ビューティフル / ミッドナイト・ラン

 パリ、テキサス
 このパリっつーのは、アメリカのテキサス州にもパリっつー地名のところがあって(綴りや発音は一緒)、そこにまつわる話。
 記憶も言葉も表情も全部置いて四年間蒸発していた主人公トラヴィスが、四年間ほったらかしにしていた息子と再会し、離婚した妻に二人で会いに行くというロードムービー。
 時間がゆったり流れるタイプの映画で、BGMもボトルネックでジョワァ~ンって感じのギター。(西部劇みたいな感じよ)
 寝た。
 いやつまらないわけじゃなかったんだけど。久々に再会した親子の交流や、どこまでも平坦な荒野にほっこりしてたら寝てた。
 ロードムービーとは、突き詰めると俺の中で「世界の車窓から」は最高級のロードムービーってな具合で、要するに景色や道を眺めるのが趣旨だと思っている。ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア、ザ・ストレイト・ストーリー、モーターサイクルダイアリーズとかね。テルマ&ルイーズ、後述のミッドナイト・ラン。バタフライ・キス。プリシラ、世界最速のインディアン、あとリトル・ミス・サンシャインも。
 昔から映画でよく使われる題材、それは犯罪(マフィア、牢獄)、旅、ホラー。俺を含めた一般庶民にとって、これほど分かりやすい非日常はそう無い。
 ロードムービーは特に、「俺たちは○○へ行かなきゃならない」か、「ここにはいたくない、いる場合じゃない」っていう動機なので、話も極力シンプルだし、無駄が無い。ほんとに登場人物に自己を投影して、「すげー光景だ」ってそれだけでもう完結している。
 大体がこう、まぁ目の前に問題があって、それはほとんどの場合解決はしない。でも辿りついたことで、振り返ると今まで見てきた景色は前と変わっていて……という形が多い。俺はここが好きだ。俺が好きな本もこういうオチのつけ方が多い。問題が明快に解決することなんて実際は滅多に無いし、実は解決を望んでるわけでもない。人間は。本質的に、困るのが好きなんだ。
 で、眠くなるこの映画の一つ非常に優れた点を紹介しよう。ちょっとネタバレだが、妻はいかがわしい店で働いてたわけだ。のぞき部屋というちょっと珍しい形態の風俗店。(wiki
 トラヴィスは電話越しに、自らの正体を明かさずに話をする。マジックミラーで妻のジェーンからはトラヴィスは見えない。部屋の照明を消すと、今度はトラヴィスからジェーンは見えない。お互いが見詰め合えることはもう無いのだ。そんな状況で今までの心中を交互に吐露するシーンの美しさ。溜め息がでる。場所がアレだけに。どっか普通の喫茶店なりで落ち合って平和に話すことはできなかったのか。出来ないんだろうなァ。
 トラヴィス役のハリー・ディーン・スタントンがかなりアクの強い顔(男前というわけではない)で、ジェーン役のナスターシャ・キンスキーが「えー……」と引くぐらい美人なのもあって、このシーンの説得力はグッと増す。
 あとこの映画からムンムン感じる西部劇感というか、開拓地区の感じ。大変よろしい。ロードムービーという、景色を映す映画の中で一役買ってる。五役ぐらいは買ってる。
 主人公もいいね。テンガロンハットにジレ、ウェスタンブーツという本格スタイル。トラヴィス。UKのバンド、トラヴィスはこの主人公から名前を取っている。「タクシードライバー」でデニーロ演じる主人公もトラヴィス。キラー7というゲームで主人公に皮肉交じりにアドバイスを贈るクソッタレもトラヴィス。トラヴィスは好きだ。俺も自分のZIPPOにそう名付けている。(素直じゃないところが俺にソックリ)

 ライフ・イズ・ビューティフル
 ロベルト・ベニーニの愛。
 ベニーニといえば俺はジム・ジャームッシュのナイト・オン・ザ・プラネット(世界各地のタクシードライバーと客を題材にしたオムニバス映画。ウィノナ・ライダーが可愛い)のすげーよく喋る運転手が印象的なのだが、そんな面白い彼が主演、監督、脚本の作品と聴いて。
 冒頭から恋人と結ばれるまでの鮮やかさにはやられたね。台詞の一つ一つにもこだわりや哲学が垣間見えてよい。奥が深いというより、よく練られているなと感じる。
 で、そんな人生賛歌的な映画かと思ってたんだが、ホロコーストによる強制収容所に閉じ込められてからは空気が一転。ベニーニは息子を励ますために「これはゲームなんだ」と言って、あらゆる悲劇を弁舌のみで笑いに変えて息子を楽しませる。その健気さといったら……おおおお!!!騙された!!俺はまた騙されたぞ!!感動的なハッピー映画だと思ってたんだ!!!ロベルト・ベニーニは鬼畜だった!!!!!
 この映画に満ちた愛を見よ!!いかに世に満ちた愛とかいう言葉が別物で劣等で俗物で異物であることか。愛を知らない無様なケダモノともには分かるまい。ケダモノではなくケモノでありなさい。
 人生は美しい。いい言葉だな。ロシアの革命家トロツキーが暗殺者に怯えながらも残した言葉だそうだ。そんな状況でもそう言えたら大したタマだよ。人生はいつ何時も美しいが、俺たちは愚かだからつい、しょっちゅう忘れる。そこに理由はないんだろう。俺も笑って死にたいね。でも人生は美しいとか言わないかな。俺には気障すぎる。

 ミッドナイト・ラン
 ロバート・デ・ニーロ主演のアクションコメディ。
 普段、アクション主体の映画はあまり見ない。ピストル何発か撃っただけで車やヘリがボカーン!みたいなものに、そこまで魅力を感じないからだ。リアリティがないとか、そーゆー間抜けなツッコミがしたいわけじゃなくてな。カーチェイスは好きだし。(ブルース・ブラザーズのカーチェイス最高)
 まぁこの映画はそういったボカーン!もナンセンスギャグとして取り扱ってる感じなので、俺みたいな偏屈でも素直に楽しめました。
 主人公ジャックは賞金稼ぎで、ターゲットのデュークは華麗に確保するんだけど、そっからギャングなり警察なりに追い回されるからさー大変。デュークと一緒に逃亡劇に転じるが、デュークはよく喋るし図々しいところがあるしで性格が正反対。この凸凹コンビがいい。コンビは凸凹でないと。のっぽとちび、堅物とおしゃべり、老人と若造、ガリとデブ。常識人と変人。コンビは凸凹なもんだ。
 娯楽映画としてよく出来てる、それ以外に超優れてるところがあるわけでもないか。軽妙な映画を見たいときやBGVに丁度良い。どこを切り取っても大体シチュエーションや前後が分かるくらい単純明快な構成をしている。
 ただ合言葉がいいですね。「See you in the next life!」(来世で会おう!)
 今世ではもう会いたくない。だから来世にしとこう。な。
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