Märchen

 ティナ、君のこめかみを刳り貫いてペニスをぶち込みたいよ。
 親権を母親に取られて、ろくに我が子にも会えない父親が精一杯選んだプレゼント。クリスマス。
 蟲の音、轟音、蟲音、蝉音、ジェット機、青空、耳鳴り、音、音、音、音。
 阿婆擦れ、大陰唇が黒く伸びきった阿婆擦れ、低ノイズの精液、僕の加工物、君の好物。
 「リタ、リタ、リンリン、リタリンリン、メタン、嘘吐き……」
 打ちあがる花火が橋の上、火のついた犬がそこらじゅう転げ回る。盲目の少女は片耳を焼かれ、彼にキスをせがむ、愛されるという確信が疎ましい。
 乳房にチョコとラズベリージャムを塗りたくって舐め取る。君が嫌い、君が嫌い。カルキ臭い。工場の廃液。B品。

 クソ寒い日、街灯の下、ポルノ自販機を破壊して商品を先輩に売った。その金で円光してる同級生を買ったT。
 そのときのハメ撮りも先輩に売って、またそいつを買った。内腿のニキビが可愛くて血が出るまで齧ったT。
 口と耳と目から蛞蝓が湧き出してくる、僕の体内を食い破って生を得る、愛くるしい関節。インクが滲む。
 蝉の音が煩いよ、つんざく様に煩いよ。見られながら君はジュースが溢れ続け、Mのやり過ぎでふにゃふにゃのアレ、葉っぱは忘れ、最悪だった暑さ。
 瞼が薄いから、血管が浮かんでマスカラ要らずな瞳にイカれてた。

 ああ、出たよ。思考はいつか言葉になるとか、くだらないこと云う輩が。お前がそんなくだらないことを云わなきゃ、死ねと思わずに済んだのに。
 うるせえ婆、黙れデブ、引っ込めクズ、臭いんだよ、とにかく臭いんだ、虫唾が走るんだ。怒りのミミズが体の内側を棘つきながら暴れて、痒くてたまらないんだ。引きちぎりたくなる血管。
 自らの意思で自らを傷つけるその姿のなんと美しいことか、その血を流すな、くつくつと喉を鳴らし、へばり付く瘡蓋。胸を掻き毟ってまだらな体液を搾り出して。
 Wxxd、ウェルテル、ウェンディ、温かい母乳。

 有り触れた言葉や理想や行動が、有り触れない君を狂わせていくんだね。
 跪いて頭を垂れ、呪詛のように愛をせがむ、アリシア、無様な奴、君は色白で傷が良く似合うが、何もないと痣になるまで殴りたくなる。
 「渇ききったミッキーを舐めろ。二つの丸い耳付きの。皺が寄ったミッキーマウス。
 冬の日の公園、午前一時のクンニ、流星群、ゴムの匂い、鼻血に染まるエンジニアブーツ」

 秋晴れの農場、フロントガラスを煉瓦で割る、白いヒビは蜘蛛の巣のよう、お前はまともじゃないよ。蜥蜴の骨が見てた。
 この街の人間はとっくに知っている、分かりきった話しかしない。死んでいるのと同じだ。

 冬は想い出が沢山ある。自分の頭をかち割りたくなるような大事な大事な想い出が。
 小学校の通学路にあった、コンクリート工場に忍び込んで誰かがセックス。
 掴んだ柵は錆びてパキパキと砕けていく。バックで突くたび、いつ落ちるかと危ぶむんだけど、全然辞める気は無かったし、いっそ君だけ落ちてしまえばいいと思っていた。
 「あのとき本当に綺麗だったのは君だけ、でも今はブスだね」
 君の彼氏が怒り狂う顔が見たくて、何度も中出しした。何度も何度も何度も何度も。君の彼氏嫌いだったんだ、僕。
 死ぬときは子宮を引きずり出して眺めているのも一興かな。君はもうブスになったけど、子宮は多分美人のままだよ。きっとね。
 嫉妬に狂ったスペルマって、酸っぱくて美味しいんだってさ。

 楽しく過ごすことに不満はないよ。
 ただ時々、そんな景色がストロボで明滅して止まらなくなって、稲を刈り取った田園で叫び続けて、誰かを殴って僕かそいつかの心の芯がズタズタにならないと気が済まなくなるときがあるんだ。

 換気扇の音、ボイラーの音、ヒーターの音、湯沸かし器の音、心臓の音、冷蔵庫の音、ブラウン管の音、水浸しの君の股間の音、真空管の音、嘔吐。
 メーテルリンク、モーリス、君のディアンドル姿、カルテル漬けのリンク、リンク。アヌスに刺さった黒い胆汁が流れるカテーテル、タール。スワロウテイル。起こさないで。眠ってばかりいる、出るのはケロイド、反吐、イド、バルドー、ヘネシー、青白いウィノナ。

 ……ああ、またその話? なんで違う他人から何度も同じ話を聞かなきゃいけないんだろう。お前らはどこから湧いてきたんだ、コピー機か?
 ロバートスミスもトムウェイツもジェフバックリィはいつも違う話を聞かせてくれるのに。
 変な顔。

 「へぇ、楽器やってるの、そう。まず顔と頭のチューニング先にした方がいいと思うけど。あと服がダサいよ。ごめん、体型もか」

 今日も排水溝、今日も排水溝、今日も排水溝、僕の意識が溶けた経血が今日も排水溝。に流れる。るん、るん、る。
 僕に命乞いをさせてください。
 君に肩からタックルして、僕が手榴弾みたいに木っ端微塵に砕け散ったらなぁ! その飛沫を君に沢山浴びせられるのに、出来ることといったらコレだけなんだ。コレ。

 背中の引っかき傷をなぞる度、君の悲鳴が聞こえる気がする。電波塔。給水塔。アレン・ギンズバーグ、心療内科のBGM、アンダルシアの犬の涙、モンマルトルの浮浪者、路地裏で天使が死んでた。
 サーカスのブランコ乗りに恋をしました。遥か頭上を軽やかに行き来する君に見とれていました。星よりも綺麗だった。
 いつまでも変わらずに愛してくれる? 青林檎を捧げます、いつしかナイフは突き立てられ、そこから蛆が湧き、ぐじゅぐじゅになった果汁がいつまでも滴って、ゴキブリが群がっていました。ゴキブリを潰すと紫の血が広がりました。
 別に泣いてなんかいないよ、何を泣くことがある、煙草の煙が目に入っただけ、泣いたりなんかしないよ。

 どうしてそんなに寂しそうに笑うんだ。黙れよクソ蟲。謝れゴミ蟲。
 電話越しに聞こえる君のあえぎ声、吐き気がする。猫なで声が癪に障る。
 イッタ?イッタ?ドウシテイッテクレナイノ、ナニモって煩いんだ。初めからナニモ無いってんだよ。

 どす黒い傷口から茶色い染みが滲み出てきている。12針の辛辣な自虐。
 慌しくパーティの準備をして、素面の君は涎を垂らし、僕は震える奥歯を噛み締め、口の中にじわりと鉄の味が染み渡る。
 病院に行った方がいい……。

 独りになりたい、独りになりたいこんな日に、君に出逢ってしまいたい。空いたその手で子宮を握りつぶしたい。冷や汗と白い息が、赤らんだ小指の第二関節に突き刺さる。
 月に突き刺さる僕の吐息、冬の日の残像、面影、フィルムに焼きついた黒い血。
 血の気が引いていく。ぐるりと腹の中で胃液がのた打ち回る音がする。胃酸過多。
 「夕食はチキンなの、帰っておいで、エリ」
 「独りぼっち気分はもうおしまいだよ」

 アルコホリック。
 感じる。
 支離滅裂な死。
 詩を読んでよ。
 覚醒した後悔。

 元気出してって言った。アンドゥ。それ、どこで売ってるのって聞いた。
 空がね、蒼すぎるんだ。僕はね、骨になりたいんだ。アンドゥ聞いて。
 僕は子供たちが廃線を歩いて、トンネルの中見つける骨になりたいんだ。草に覆われ、ムカデが這う、木の枝に似た骨。
 僕らはモーテルで元気を探した。どこにもなかった。16の骨だった。

 「世界で自分が一番醜いだなんて、自惚れも大概にしてよ、って感じ」

 君のレッテル張りっていつも驚くぐらい外れてるから、こっちが恥ずかしくなるんだ。
 小さい頃壁に頭突きしすぎたんじゃない?

 ヴィレバンで手作りのシュシュを売ってたあの子はどうしたんだろう、屋上から「いっせーの」しようと言ってたあの子は。
 生き残るってかっこ悪いよね。生きるのってかっこ悪いんだ。嫌になるよね。癖になるよね。

 嫌なものから目を背けて、蓋をして、遠ざけて、見ないフリをして、自分はまだ大丈夫、まだ大丈夫って言い聞かせて、合わない歯の根、逃げたい逃げたい帰りたい帰りたいって、イカの様な目つきで夜の街を歩いて、何も変わらないさ。
 学校に馴染まないあの、中々気持ちのいいあの少女、なんてったっけ、いつもさ、ああいう子がさ、とっとと相手見つけて出来婚して、これが外れでサ、同じぐらいの速さでささっとリコンして、子供を育てるんだな。カッコいいじゃん。苦労してさ。エロいよね。でもまたバツイチを使い捨て目的で漁ってる奴に釣られるんだよね、バカだよね。笑っちゃうよ。悪者なんていないけどさ、子供からしたられっきとした悪者だよね。客観的に見ての話だよ。馴染めなかった理由が結局さ、頭悪かったから、なんて、そんなふざけたことがあるかよって。そんなの無いよね。そうじゃないってことを証明し続けてほしいよね。
 「相も変わらず車のバックミラーにドリームキャッチャー、お前アホだろ」

 「メルテ、メーテル、メルテル、カルテル、カテーテル、カイテル、メルトダウン、ハーヴェイ」

 ゴダール、ベルイマン、ハシシ、ジャズ、ジャームッシュ、エヴァンスのピアノ、ピアフの歌、タール、勝手にしやがれ、ダリ、片足が無い犬、アロノフスキー、案山子、ヴェンダーズ、ベルリン、スピード、カラックス、汚れた血、醜い血が僕に流れている、血が痒い、惨めだ、惨めだ、モダンラブだ、ボウイの、美しく生きたいって誓った、自分が許せない、ラ・ラ・ラ。
 コッポラ、シャルロット、ランブルフィッシュ、ゲンスブール、ガラスの墓標、マリアの受胎、破瓜、麗らかな午後、純白のワンピースを汚さず眠るように死ぬ。

 「覚え方は沢山教わったけど、忘れ方は誰も教えてくれなかったよね」
 「ドラクエやポケモンで一番使ってみたい技がそれだったな、俺」

 自分は狂ってるからこんなに駄目なんだ、という確証が欲しくて薬や煙草や酒やセックスに走る愛おしい人たち。
 君達の寝顔はとっても可愛い。
 何が言いたいかって言うと、僕より早く寝るなよ。寂しいじゃないか。
 考えすぎだよって僕も笑った。それは癖だから治らないんだろ。

 誰も居ないスケート場で血を吐きたいです!
 この際トマトケチャップでもアンチョビでもピクルスでもいいや!
 「「とにかくもう、寒空のテニスコートで、とろけたピザと溶けかけの錠剤を吐くのは真っ平だってば!」」

 Märchenの痣。帝王切開の縫い傷。
 Märchenの生き血。
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