人を悪く言った分だけ、人が怖くなったよ

 立食パーティの最中、ダニーは馬鹿そうな女とトイレに消え、僕は赤い包みの粉を少し鼻に吸い、ああ、短いラインだと笑われ、乞食に戦争に勝ったと言い、川沿いで君は泣き、橋の下で爪を咬み千切る。
 血を舐める、血を溜める、クライマックスがまだだよ、もういいよ。
 エンドロールに名前がない主役…。

 「誰もがそんなレースに必死になってると思うなよ。アホか」
 「独りで走るのが怖いんだろ?」
 「バカだなぁ、お前のレースはもう随分前に始まって、ゴールテープはもう誰かが切ったよ」
 「「お前はどう走り終えるの? それとも棄権するの?」」

 1日だけ交換しようか、君の最後の一日と俺の最初の一日を。きっと同じだよ。
 憎しみが壁と窓を塗りつぶしてるんだ。
 絶叫に似た子守唄、歌えよマルコ、笑えよ、笑えって。

 まどろんで昼過ぎに起きてさ、歯磨きして、珈琲いれて、煙草に火をつけて、上を見ると空が綺麗で、どうして綺麗って思うんだろうって考えるんだ。
 そうするとね、それは何も無いからだとか、雲があるからとか、紫外線の中で青い波が空気中で拡散しやすいからだとか、色々考えるんだ。夕暮れの赤方偏移もね。
 でもね、いつも最後に思うんだよ。
 自分が汚いからなんだな、って。

 深夜高速、25時、プラチナ、帰ればいいさ、後ろを向け、蹄鉄、沢山落としたね。この道の先に沢山あるよ。
 サンダンス・キッド、転げ落ちるのさ、笑おうか? 唐草のように笑おうか?
 起こして…ねぇ。
 それは、有罪。

 甘い匂いのするオカマにキスをされて、不思議と嫌な気分でもなく、爆音の中でうたた寝をしていた。
 左肩が痛い、左肩の後ろ、肩甲骨と、肋骨の隙間かな。奥歯も。夢の中で君の鮮やかな鼻血を思い出す。来ないで!

 当たり前、当たり前になった。
 空が黒いことも、カーテンが笑っているのも、視界の端に鎌が揺れているのも、何も無い雪原で踏み切りの音が聴こえるのも。
 君が居ないことも、夢を見ないことも、金を稼ぐことも、セックスするのも、日差しの下、隣人は殺人鬼、悪意の伝播、バカのバカさ加減、子どもは加害者、服の選択、電波塔のはやにえ、殴り殺すぞ、当たり前、当たり前。
 当たり前。 
 当たり前になった。なりまし…た。ツッ。

 夏はソーダ水に溶かされて、海から上がって、くっつけたおでこから涙を流して、睫毛が触れ合うよ。
 君の鼓動の音を食べたよ。そして君は僕の体温を盗んだ。
 それから…それからね、ナイフでズタズタにしたんだ。もう泣かないでいいように。カメオをね。

 殴るたびに手が痛む俺の身にもなれ、楽勝、お前のためを思って怒ってるんだぞ、楽勝、頭使えよ、楽勝、誰のせいでこんな目に合ってると思ってるんだ、楽勝、これ何が悪かったと思うよ、言ってみろ、楽勝、お前が食った飯は誰が買ったと思ってるんだ。
 OK、楽勝。

 一言目にたどり着くまでに、どれだけの言葉を捨てればいい?
 どれだけの血を、涙を流せばいい?(笑)

 「なんだかねえ、本当にねえ、痩せてやつれて、それはそれは、あなたの価値の無い愚かさが疎ましくなってねえ、まあそれはいいのよ、ほほ、まあ、、、いいのよ」

 カフェテリア、彼女は憂鬱だった。
 ココアに刺したままのシナモンスティック。回らないオルゴール、アイダホ、美しく退屈な街、当たり前に17になり。
 田園で絶叫し。、雪が眼球に軟着陸する。
 遠くで、汽笛の音がする。あれは、鯨の代わりに鳴いてる。

 今だけ鳥になれる。双子を身ごもった女、トンネルをくぐる、夜明けまで待とう。
 北欧産の椅子。線路に耳を当てる、電線がたわむ、台風が、来るよ。
 怒りが水に溶け出したら、どこに落ちるんだろう。どんな花が咲くんだろう。それは誰の墓にあげる花だろう。

 葉が落ちる、陽が落ちる、涙が落ちる、眠りに落ちる、夢に落ちる、恋に落ちる、夜に落ちる、空に落ちる、時計の針、四時を指す。

 写真を、撮った。幽霊の君と。シャッターの速度は月と同じ速度。
 風が強い、太陽はギラギラ、フラクタルな窓、川にはゴムの長靴、軍手、ツナギ、なんとかの資金、気だるい午後。

 メルテ、ニコ、歩けニコ、ミハイ、泣かないで、シルクハット、蝶番、外れかけてる、錠前、お嬢さん、花を積みに、傘をお忘れですよ、水玉のゴーグル、ニコ…。
 腐った名前、止まった目、頬ずり、ペニスをしごく、頭蓋骨を叩く煉瓦、もう忘れちまった、切手は失効、最短距離、コリジョンコース、お手製のロケット、もう忘れつちまつた…。

 あんたも段々慣れてきただろう、次の悪さを考えてんの? それも子供騙しなんでしょう、およしなさい、およしなさい。 

 ゲロゲロに吐いて頭、痛くってさぁ、でもまだ飲んで、口ん中ギトギトになるくらい煙草吸って爆音で音楽、メリーチェインとかの、耳までおかしくて遠くのサイレンよく聞こえてさぁ、もう二度としないって脳の電源が落ちる寸前や次の日思うんだけど、その日の夜にはまた吐き気が来るんだ。
 そいでどうせ吐き気がするなら飲んでたほうがマシって安いワインとかコンビニで買って、塩舐めて、同じことしてて、毎日やってたいなとかワンピースの裾弄って言う女とか信じらんないけど、分かるなぁ分かるなぁって呟いといて、そういえば全く似たようなことを違う女としたし、こいつその女とソックリだったし、それを言うと灰皿で殴られて、あのときは本当にチカチカしたな、霧はやたら濃いし時間はゆっくりで1分に何回も時計見たりして、朝来るの、来ないの、賭けでもしよう、どうせ来ないよ、来るね、来ちゃうよ、いいや来ない、来ちゃった、泣こうか、海行こうよ、それから死のう?
 奥歯震えてフィルター噛み切っちゃって苦い味、ビニール袋みたいな、目玉が血でいっぱいの袋になるような、あんたの乳房、臨月みたいだよ、血管が浮き出ててさ、メスを突き立てたらきっと綺麗だよね、ベロンって黄色と白の脂がめくれてさ、欲しかったパンタロン買えばいいよ、働く? 同じ日、同じ日、同じ日、同じ、日。西日の強い部屋、黄ばんだエアコン、擦り切れたジーンズ、尻ポケットが破けてた。
 水差しにグッピー飼ってたじゃん? ジョーズとか洒落で頭悪い名前つけてさ。
 今朝死んじゃった。餌ね、忘れてたんだよね。そいでいつまでも目を覚まさないから、お腹を上にしてプカプカしてたの。
 死んじゃったぁっ。

 おべんちゃら使いのヒーロー
 涎を垂らしたヒーロー
 シリアスなときほどおどけてみせて
 君を笑わす無敵のヒーロー
 彼はね、家に帰るとまず膝の土を落として一回泣くんだ
 今日もあの子に声かけられなかったねって、でも家に帰れただろ? そんなに泣くなよ。

 笑えませんか? 惨めだと、何度目だと、同じことだと、似たようなものだと、僕は笑えます、顔が、顔さえ動けば、きっと笑うのに、今すぐ笑えるのに、きっと笑うのに、笑えるのに、一生懸命勉強したのに、あんなに真似したのに、あんなに嫌な気持ちを、勉強したのに。

 警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察警察見ない振りしてね。

 海月、無花果、新宿、ウサギ、鉄線、干潟、マイスリー、懐胎、ロールアップ、靴下、剃刀、引っかき傷、あと二駅。
 空の手、涙、残滓、フィルム、轢き殺される、レタス、鉗子、乳歯、ヴォンゴレ・ビアンコ、洞窟、線路、トロッコ、あの花、いつか散った、晴れた日、冬の、もういいって、言って散った。
 あと、一駅。

 「裏切られる予感を感じながら信じたいのさ。
 それしか無いとか言っちゃってまぁ、健気なことね」

 あの海、塩の匂い、撫で回す犬、素敵な貝殻、体中の鈍痛、胃の中に鉄、落ち窪んだ気持ちを少し舐めて、たわけた話で君が笑うことばかりを望み、僅かでもいい、有体に言えば忘れて欲しくないんだ。
 予想通りの結末にたどり着くまでに、幾つの死体の山を積み上げれば気が済むんだい?
 目、腐ってるよね。見てる人がいないと。分かってるよ。

 吐きそうだ、この話、吐きそうだよ、どこまでも行けるさ。困ったことにね。
 触って、触んないで、探って撫でないで、近寄らないで、離れないで。
 誰にも口を出させるなよ。

 悪い癖だよ。
 お仕置きが必要だけど錆びたナイフしかないんだ、切れ味が悪いし化膿するよ。
 でもそれは本当に悪い癖だよ。
 お仕置きが必要なんだ。君の為なんだ。悪く思ってくれる?

 嗚咽か、苦しいのか、こんなにも苦しいのか、狂おしいのか、耳が腐り落ちてるのか、落ちてるのか、落ちてるのかな。
 絶交調。

 「心臓は生ゴミ」

 魚だったら溺れ死ぬ、鳥だったら墜落死、植物なら咲く前に枯れ、ニンゲンだったから窒息死。
 それが私。君と抱き合いながら、臍帯で首吊り自殺。

 嫌われる前に嫌われるようなことを言っておかないと、嫌われたときの理由が自分自身にしか存在し得なくなるから、わざわざ嫌われるような行動を繰り返す生き物。
 お前の生態は実は全員にお見通しだぞ、この顕微鏡でな。あれ、万華鏡だったか?
 アラアラだ、とにかく。アラアラ。

 光なんて別になくても生きていける。むしろそんなものは邪魔なんだ。
 みんながきっと羨ましがるよ、君はあまりにむやみに自分の純粋さを曝け出しすぎなんだ。
 ほらまた都合の良いを探す蠅がいる。都合の良いが奪われる。
 花の生命は短い、その意味を考えたことがあるかよ? その意味を。

 僕は今は持ってない、只、今は持ってないだけなんだ。きっとそうだけど。
 君の価値の無さはね、君の気持ち悪く無さと直結してるんだよ。君は気持ち悪くない、心配するな。
 むしろ無味無臭、どうでもいいんだ。
 綺麗事を身体に縛り付けて溺れて死ねよ。

 あの鷹、黒い、空一面の、激突して落ちるよ、僕の手の中に、そして爪をついばむ、天使は囁く、当たり前に聴こえるよ、羽ばたく音さえ、そして気付く、飛び立ったことが。もう、戻らないことが。

 君が云う海は臭い、あの娘の云う海は綺麗。今日はあの娘の晴れ舞台さ。
 君が云う海は腐ってる。そのくせ何の生き物もいないし生まれることも無い。
 あの娘の云う海は珊瑚とバクテリアの楽園で、熱帯魚もまあいるし、これからタツノオトシゴも遊びに来るんだ。
 僕も行くよ。サヨナラ。

 早いのは好きじゃない。407号室、部屋でまだ君が待ってる。
 呼び鈴が鳴っても出るなよ、それ俺じゃないから。
 テーブルの裏にマスキングテープで貼り付けた錠剤も飲むなよ。
 それ、お前はヨレるから。半分でもだ。言ったからな。

 「人を悪く言った分だけ、人が怖くなったよ」
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