18
2015

そうだよ、

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 ある日、木漏れ日の中、薄く目を閉じて、目蓋に通る血管で視界がまばらに赤く染まる。
 鳥のさえずりが降ってくる、思い出したんだ。
 君と二歩距離を空けて並木道を歩いた。
 足元には紅葉が沢山落ちていて、紙吹雪、男の子が手放した風船、クラッカーの音。
 ローファーの踵が三拍子。
 チェックのスカートを広げてお辞儀をする、三文芝居でもお姫様には違いないし。
 縫い付けたワッペン、染め上げたワイシャツ、蛇腹のように青い。
 子どもの笑い声が妙に耳をくすぐる、こそばゆかった。
 色素の薄い、外人と見分けの付かない子が走っていく。ワゴンで買ったジェラートを手に持って。
 この通りが終わる頃には他人になる。
 トレンチコートの裾が翻る。赤いマフラー、目の細かく艶のある表面。
 黄色が増していく。風が吹く。焚き火をした。君を燃やした。写真を燃やした。
 女子高生がそれを一瞥して、友だちに耳打ちして笑った。

 錆びの浮いた手すりを握りながら、踏むたびに踏み切りの警報音のような音を立てる階段を昇る。剥げた塗装のぱらつきが、指の腹をひっかく。
 一段昇るたびに身体は鉄になっていく。動くたびに膝から煙が出る、じゅう、じゅう。目尻から涙のようにネジが零れる。
 失われていく、思い出、金、体温、鍵穴、羽根、時計の針、瞳の宝石、ニコ。
 この階段を昇り終えるころ、一体僕は何に謝るつもりだったのか、どうしてそれを忘れてしまったのか、それすらも思い出せない重みで壊れて物言わぬ石になる。
 石になるんだ…。

 時計の針が止まって見える、空は灰色、雲は無いのに、嫌な予感がする、高速道路の感じがする。
 そういえばあの子、いつも口の端にニキビ作ってた子。
 生きてることが辛いんじゃなくて、辛い自分を誰かが見てると思う自惚れが辛いって言ってたそうだよ、
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