悪童日記 / 12モンキーズ / ピエールとクロエ / 夏の庭 / ミスター・ノーバディ

 本を読むのが早くなった。
 前は丸一日、下手したら3日、いやいや1週間、そろそろ間が空いて初めから読み直す羽目になりまた挫折し読了せずに…とかなんとか。
 月曜から一日一冊のペースで読んでいる。今日は映画を見てたらこんな時間になってしまったが、まだ間に合うだろうか?

 悪童日記
 意図してかせずか、時代や舞台の説明はかなり省かれているので、そのようにあらすじを説明する。
 ”大きな町”から戦争の疎開として、小学生低学年~中学年(多分)ほどの双子は”小さな町”の中でも、外れの家に住む祖母の家に預けられた。
 この祖母は自分の夫を毒殺した噂があり、町では魔女と噂されていた。口が悪く双子は容赦なくこき使い、双子の母が送る仕送りを全部かっぱらい服とかなんとかは全部隠す、ぐらいには性格が捻じ曲がっている。
 主人公の双子は一貫して「2つで1つ」という描かれ方をされており、作中で個々の名前が出ることもない。2人とも極めて容姿端麗らしく、話の中でもそれは効果的に作用する。また、知性や記憶力、人格も常軌を逸している。
 戦争や厳しい家業、現実を生き抜くため、双子はトチ狂った訓練や習熟を繰り返して成長していく、という話。この本自体も双子が訓練の一貫でつけた日記、という体をとっている。
 「みたいな」「○○が好き」等の感情は主観によるので不適切、という判断で潔癖に廃絶されているが、多少なりとも心情の読める描写を残してあるのが憎い。その部分が、より輪郭を持って浮かび上がってくる。

 タイトルからして、てっきり無慈悲な子どもが悪行を繰り返す話かと思ったが、それは違った。
 双子は残酷ではあるが無慈悲ではないし、恩義にはきちんと報いている。それも双子なりのやり方であるが……。
 かなり性的倒錯、ホロコーストや障害差別の要素が強いので、その辺のニュアンスを加味したタイトルだろうか。
 一言で言えば映画「禁じられた遊び」だな。
 中々面白い本だった。映画化もしてるらしい、出来もいいそうだがそれは、まぁ、機会があれば。

 12モンキーズ
 伏線張りまくり、そんで伏線回収しまくりのタイムスリップ映画。
 ”12モンキーズ”という謎の軍団がばら撒いたウィルスで人類が90%死んだので、その軍団を囚人のブルースウィリスが過去に遡って解明する、という話。
 タイムトラベルと陰謀論を組み合わせたような話。
 雑に言えばテイストはドニー・ダーゴみたいなもんだ。

 かなりトリッキーな展開をしてくるが、話自体はシンプルだし見やすい。ただ疲れる。僕はこういうのは見直さない人なので、一回で画面に映る要素諸々を全部頭に叩き込むから。
 スッキリもしない。なんでかというと、回収される伏線のうち解明されないものがいくつかある。
 ヒロインが何度も未来から来た主人公のことを「見覚えがある」と言うのだが、その理由が全く、これっぽっちも説明がない。他はくどい位に繰り返したり画面で見せたりするくせに。
 で、ネットで他の人の解説を見てみたら「ツインソウル」とか説明されてたりする。バカか。こじつけんな。こういう小難しい(風の)映画の批評って頭悪い奴ばっかりで苛々する。

 ストーリーが目まぐるしく展開するので、そういうのが好きな人にはたまらないでしょうね。
 結構面白かった。オチもウケた。ヒロインとのロマンス部分はもっと色々どうにかできたと思う。

 ピエールとクロエ
 この本を読む前にバカなヤツらは皆殺し、という本を読んでたのだけど、まぁーこれが子供騙しなクライムロードムービーもので、半分ほどで心折れた。10代が読むにはいいかもしれないが……。
 だからなんとなく平和そうなヤツを読むことにしたわけだ。

 夫に不倫されて捨てられたクロエは絶賛傷心中、義父のピエールに連れられて田舎の別荘まで。
 そこで寡黙で亭主関白でくそオヤジと思っていた義父から、昔話を聞かされる。
 基本的にこれだけ。3分の2は暖炉の前でずーっとピエールの昔話を聞かされる。
 結構面白かった。終盤感動的な部分もあったし。

 それにしてもまぁ、フィクションの中で「大人の恋愛」って、形はどうでもこんなに世の中に提示されてるのに、現実で「大人の恋愛」って殆ど存在しないのかね?
 もうちょっと口説くとか嘘つくとか、会話とかそれぞれのスタンスや美学や、言い訳や保身がしっかりとあってもいいんじゃねーの。
 「どいつもこいつも恋愛マスターみてえな顔して、てんでモテないクソばっかじゃん」ってことです。
 やっぱり世の中の9割はブスとブサイクなんだなーって。中身が。
 まァ、僕には関係のない話だ。

 夏の庭
 近所の死にそうな一人暮らしの爺さんを、ズッコケ3人組みたいな主人公たちが見守る話。
 ああこれすごく良かったです。心のビタミン剤。瑞々しい山葡萄のような……。
 みんな読んだほうが良いです。本当に良すぎてそれしか言うことない。以上です。

 ミスター・ノーバディ
 シュレディンガーの猫を、人の人生になぞらえて映画化した作品だね。
 テロメアだかを改善して人類が死を克服した未来、唯一不死の手術を受けてないヨボヨボ主人公が、死に瀕して過去を回想する。
 催眠術で、いきなり生まれる前まで退行するのがユーモラスだ。
 その後両親が離婚し、父と母どちらについていくか、で人生が分岐する。その後数々の選択肢で枝分かれしていく複数の人生を同時に描いていく。

 割合がロマンス7:SF考証3ってとこなので、僕も気楽に見てたがそれでも殆ど混乱しない。主人公のどの人生も、かなりの部分をすんなり把握できる。
 かなり入念にプロットと画面の統一感が計算されてる。凄いなぁ。もっと話題になってもよかったのでは?
 シュレディンガーの猫にくわえ、バタフライ効果や時間の矢、エントロピーやビッグバン及びビッグクランチなどにも触れているが、事前に「そういうものがある」程度の知識があった方が話には集中できるだろう。

 この映画の主張の一つは「人生のどの選択が正しいとか、間違いとか、それは重要ではない」だと思う。多分……。
 だから小難しいことは置いといて、しっかりと正面から画面を見据えれば、この作品のエンディングがとても素晴らしいものであるという気持ちが心から湧き上がってくると思う。
 エンディングの主人公の一言は、強いて言えば「全部正しい」と言っているのかもしれない。いい映画だった。
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