18
2016

道化

CATEGORYカルチャー
 ピエロが好きなんだけど、諸説入り混じってて分かりにくいので自分なりに整理してみた。

 まず道化師はクラウン(日本で言うピエロ)とジェスター(宮廷道化師)の二つに分かれる。
 ジェスターは王族などに仕える職業芸人。犬猫のような立ち位置だったそうだが、唯一支配者層に物申すことや失礼な発言を許された特異な立ち位置でもあった。神話のトリックスター(北欧神話のロキとか)のようなものだ。
 物語を語ったり、歌や音楽、アクロバットやジャグリング、奇術など様々な芸を会得していたらしい。
 トランプに描かれるジョーカーはこちら、ジェスターの方の道化師。ちなみに他の絵札は王族。
 ジェスターの中で最も著名なスタンチクという人物は、政治哲学への造詣も深く、単なる芸人を超えてご意見番的な役割として支配者層でも一目置かれていたそうだ。
 服装は全身タイツでおどけた帽子、顔の変装は控えめのようだ。

 対してクラウンは大衆喜劇、曲芸の中継ぎとして生まれた。一般的に思い浮かべるピエロは此方。
 ジェスターが歌や物語など知的なユーモアを用いて一定の地位を確立していたのに反し、クラウンはスラップスティック的な面を持ち庶民的だ。
 また、実はサーカスの中でもあらゆる芸を習得した、最も優れた芸人がクラウンの役職に付くそうだ。
 他の曲芸が目を見張るものに対し、クラウンはわざとそれを崩した下手な芸やパロディを行うため、真っ当に行うよりも危険で高レベルな技術を要求されるからだろう。
 またクラウンの中にピエロというポジションがあり、これが混同されている。
 クラウンの意味にはのろま、ばか、おどけ者、おどける、ふざける、田舎ものなどの意味を含むが、特にその中でも間抜け、おろかな面をデフォルメした存在と考えればよいか。
 クラウンとピエロの細かな違いは、メイクに涙マークが付くとピエロになる。涙のマークは馬鹿にされながら観客を笑わせているがそこには悲しみを持つという意味を表現したものであるとされる、らしい。

 道化師の原型はコンメディア・デッラルテという、主に旅芸人たちが演じた仮面を使用する即興演劇に散見される。イタリアかな。
 この喜劇の登場人物たち、劇団によって細かな差異、統合や分裂はあるが、おおよそ物語に基本とされるキャラクターや性格の原型にもなっている。
 どの物語にも固定のキャラクターを登場させることで、各人物がどのような役割を持ち話を展開させるかを聴衆に分かりやすく伝える、という非常に機能的な面を持っている。
 台詞を言いやすいように鼻から上だけの仮面を用いて演じる。
 手塚治虫のスターシステムと同じ作用だ。
 これも大分煩雑としているが、各キャラクターの持ち味が面白いのでいくつか取り捨てしてまとめる。
 おおよそ以下の4つの人物がレギュラーとして存在する。

 アルレッキーノ
 所謂主役のトリックスター。軽業師、道化師。ペテン師だが、極悪非道ではないという性格づけをされている。
 機転の効いた振る舞いが多いが、その場しのぎのため、後でしっぺ返しを喰らうことも。
 フランスではアルルカン、イギリスではハーレクインとも呼ばれている。
 他の登場人物を打ち据えるためのバトン(後のスラップスティック)を持っている。
 猫の面を被り、赤・緑・青のまだら模様の衣装を着ている。この模様は、デザインの古いモチーフの一つとして今も残っており、道化の衣装の起源とされている。
 アクロバティックな動きと当意即妙な台詞回しを持つため、嫌でも目立つわけだ。

 コロンビーナ
 コロンビーヌとも。インナモラータ(後述)に仕える女の召使い。アルレッキーノの恋人。
 肉体的魅力で周囲を惹き付けるお色気担当。無学だが生まれながらの知恵を持っている。ぼろぼろでつぎはぎだらけの服を着ている。
 アルレッキーナと呼ばれることもあり、その際はアルレッキーノと同じようにまだらの道化服を着用する。通常は、仮面を使用しない。(ルックス重視?)
 小道具としてタンバリンを持っていることがあり、パンタローネがしつこく言い寄ってくるのをかわす目的で使用することもある。女性が演じる役。
 複数の面で女版アルレッキーノと言える。アルレッキーノ同様物語をかき回す役目にあるようだ。
 当時、女性が演者というのは相当に掟破りだったらしい。

 イル・カピターノ
 語義は「隊長(the Captain)」。かつての戦士。戦さでの手柄を自慢しており、人々の尊敬も集めているが、その手柄は別の者が立てたもので、実は臆病者という設定。
 衣装としては軍服を着ることが多い。パンタローネがカピターノの娘と結婚したがっている、という状況が描かれることがある。
 見栄っ張りな臆病者だが、こういう人物がいないと話が転がらんのだろう。

 パンタローネ
 金持ちで、欲深で、色欲旺盛な老商人。鉤鼻で、とがったあご髭。
 男らしさと精力の象徴として大きな股袋(コドピース)を股間に付けている。
 役柄として、インナモラータの親とされたり、イル・カピターノやイル・ドットーレの友人や商売仲間とされたりすることがある。
 パンタローネによる商売の計画が召使いザンニ(召使キャラの原型、後にアルレッキーノや下記プルチネッラなどに細分化する)によって妨害されるのがお決まりのパターン。
 要するに意地悪でスケベな騙され役ということだ。
 イル・ドットーレ(語義は「博士、医者」)という別人格も派生している。こちらは黒服に短い外套を着た饒舌なインチキ学者。

 以上4つ。ピエロに関係有りそうなキャラだけ抽出した。
 他にも多彩なキャラクターが登場するが、雑多なので知りたい人が勝手に調べてくれ。

 インナモラーティ
 これは役割ではなく、物語の中で恋をする若者達のこと。恋の成就に困難が立ち塞がるが、最後には結ばれる筋書きで演じられる。
 男をインナモラート、女をインナモラータ(コロンビーナはこいつに仕える)と言う。マスクは被らず、脚本の指定がない限りは、最新のファッションを着用する。歌や楽器演奏や詩の暗唱を求められることがしばしばあるため、演者はそれらにある程度精通しておく必要がある。

 そして冒頭のアルレッキーノと、以下2つのキャラクターの要素が混ざり合ってピエロ、クラウンというキャラクターの雛形が誕生したそうだ。
 プルチネッラ
 猫背のだまされやすい男。
 鷲鼻の黒いマスクを被り、白い外套を着ている姿で現れることが多い。この外套がピエロの衣装に受け継がれているそうだ。
 フランスにおけるピエロの起源を、このプルチネッラとする説もある。

 ペドロリーノ
 現在ではピエロとして知られるキャラクター。
 白いマスクを被った夢想家で、繊細な性格。召使い役で現れ、物語を引っかき回したり、インナモラーティの恋の仲立ちをしたりする。
 愛嬌ポジション?

 要するに道化師と一言でまとめても、ピエロ、クラウン、ジェスターとおよそ3つのキャラクター、役割が存在するという事だ。
 主に衣装の違いがあるが、その性格は少し頭は足りないかもしれないけれど純真で夢想家、その実一番の努力家で聡明、というイメージで相違ない。
 見た目の恐怖感も含めて、愛くるしさに満ち溢れた存在だと僕は思う。
 今の世の中にはピエロが足りない。
スポンサーサイト