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2016

鉄男 / エレファント / リリア 4-ever / グラン・ブルー

CATEGORYカルチャー
 鉄男
 一作目。話は度々聞いていたが、ちゃんと見るのは初めて。
 痺れるなァ、切ないなァ、この質感(失陥)たまらんなァ、そんなところだろうか。
 体が鉄になっていく悪夢にうなされるサラリーマンが、実際鉄になっていくという、言ってしまえばそれだけの話。

 順調に何が言いたいのかまるで分からなかったんだけど、ロマンチズムと性的倒錯(この場合矛先は鉄だろうか、速さだろうか)は純粋に昇華されたように感じた。
 フロイト的に考えれば、この映画は男性器の象徴だらけだろう。それでなくても性的アピールやモチーフは多い。
 とにかくこの映画は速い、何もかもが速くてちっとも追いつけなかった。こんなに速いのは久しぶりだ。
 綺麗よりカッコいい要素が多かった。

 速さや技法、雰囲気その他で連想したのは「おそいひと」だった。これもタイトルとは裏腹に速かった。
 続編どうなんだろう? 誰かこっそり耳打ちしておくれ。

 エレファント
 久しぶりに見直した。コロンバイン高校銃乱射事件をモデルにしている。
 ドキュメンタリーとフィクションの中間ぐらいの手触りだ。
 映画的な演出はほとんど介入せず、カメラが何人かの生徒の背中を追って、銃乱射が始まって、それで終わり。
 わざわざ名前が与えられて、「こいつ何かやるのかなー?」的な場面があっても、別にストーリー上では何もしない。
 徹底的に「この世のどこかで、確かに存在する瞬間」を抜き出したかった、かと思われる。

 この映画のエンディングと、陰鬱な閉塞感が好きなんだ。
 実際の事件の犯人がいじめられていた事、作中でも軽くいじめられている描写があるが、それは(あくまで映画内に限定すると)犯行の動機とは考えにくい印象。
 作中の犯人はいじめというよりも、もっと厭世的な感覚で犯行に及んだ気がするし、映画自体そういう風に描いている気がする。
 なんせ自分を苦しめた奴、無視した奴、見捨てた奴らを全員撃ち殺してやる、みたいな気概は全く見受けない。
 通販で銃が買えなかったら何もしなかったんじゃないか、ぐらいの。
 通販で銃が買えなかったから何もしなかった人が多い日本、という国の閉塞感に苛まれた人間からするとそう感じるな。

 とすると、銃社会や銃の存在への、非常に希薄で非常に痛烈な批判なのだろうか。
 まぁ銃を撃つ奴は、銃が無かったら銃を撃てないからね。そりゃそうだ。
 実際の事件はどうだか知らないけど、この映画内の犯人は、単に世界そのものを終わらせたかったんだろう。
 同感だ。僕とは手段が違うけども。

 リリア 4-ever
 旧ソ連とスウェーデンを舞台にした、売春奴隷犯罪を描いた映画。
 一人の女の子が徹底的に酷い目に合う、合い尽くしていく悲惨なお話ですね。

 これも閉塞感が凄い。街の景色から全く魅力を感じない。住んだら一生出れない、娯楽や物資は何もないと、どこを見ても一瞬で分かる光景。
 売春どうこうよりも、人の孤独や希望を利用するあくどい手法そのものに反吐が出るというか、邪悪そのものというか。
 実際こんな目に合ったら心が死ぬと思うんだけど、心が死んだ人間の時間を買って何が楽しいのかと思うよね、マジで。

 主演の子が可愛いので、それだけでまー良かったんだけど、1点だけ。
 羽根はどうかと思う……。

 グラン・ブルー
 以前BIRDYという映画を紹介したが、あれが鳥人間バーディならこっちはイルカ人間ジャック! 是非続けて見るといい。
 他にあるとすればなんだろう。犬人間?南極物語か? ライオン人間?ん??
 ムカデ人間の話はやめろ!

 っていうか多分今更ですよね、映画自体。今更見て超感動した。ニキータやレオン以前にこんなに素晴らしい映画を撮っていたとは……。
 実在の天才ダイバー、ジャックとエンゾの二人を中心に据えたオリジナルストーリー。
 世俗を離れ、どうしようもなく海、深海に惹かれていく二人の男、そんな男に惚れてしまった一人の女を描く。
 先に言っておくと、この映画のヒロインはイルカだ。
 この映画のイルカたち、ちょちょちょちょーかわいい。なんでこんなにかわいいんだ? 元々イルカそんなに好きじゃないんだけど、惚れそうだ。
 あと主人公の親友にしてライバル、エンゾもいい。ジャン・レノが好演している。
 海を通して母性を描いた映画、というレビューを読んだが、それは確かに当たっているように思う。
 豪胆で向こう見ずなエンゾは、唯一肝っ玉母ちゃんのママに頭が上がらない。(イタリア人は皆マザコンらしいね)
 ヒロインのジョアンナは子を宿すことで、家庭や母としての自分を望む。
 そして幼い頃に母を失った主人公は、母の代わりとなるものを取り戻すために深海に潜っていく。(解釈の一つ)

 特にエンディングのイルカの存在は、深海という真っ暗で光も届かない世界でありながら、そこが楽園であるかのように慈愛に満ちている。まさに母。泣いた。
 人魚たちがこの世にいるとすればイルカだろう。
 「溺れたら人魚が迎えに来てくれる」とは、冒頭で溺れ死んだ主人公の父親の台詞だが、本当だったらどんなに素敵なことだろう。

 クソみたいな現実に窒息するほどの閉塞感を感じる4作だった。死んだほうがマシだ!!
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