不純物

 最近、頭髪から爪先まで脱力するような、「なんじゃそりゃ、くっだらねぇ……」という出来事に遭遇したので、久々に悪意を持って筆を取る。

 先日とあるサイコビリーのバンドと対バンした。サイコビリーと言っても、演奏力不足をパンク成分で誤魔化したロカビリーと表現した方が適切だ。
 音楽的快感に基づく閃きも、グッドメロディも、空間を切り裂くようなスリルも、一切存在しなかった。だらしない喧しさだけが響いていた。
 悪い人ではないんだろうけど、なんてつまらないんだ、ここまで来ると退屈の暴力だな、それが僕の感想だ。
 このバンドが最後の曲を披露する前に(この段階で僕は「まだやるのか、もう勘弁してくれ」と思っていた)、大切な人が亡くなったのでその人に宛てて、と言って演奏した。
 とは言いつつも、先ほど申したこのバンドの特徴を踏襲したものだった。
 底知れぬ深い哀しみを表現するメロディも無い。
 言葉に出来ぬ思いを掬い取った、秀逸な言い回しも無い。(そもそも全編ヘタクソが唸ってるだけで何を言ってるか分からない)
 ジャンルを超越するような驚異的な発見や曲の構成も無い。
 ましてや言い分を是が非でも納得させる、有無を言わさぬ演奏力も無い。
 要するにゴミみたいな曲だった。
 もし僕が死んだそいつ自身だったら浮かばれない。
 いやむしろ憎たらしすぎて悪霊化する
 僕の命をダシに使って、まぁよくもそんな駄作を作ったもんだ、僕の命ってそんなに安いんだ、この程度は思うだろう。

 そもそもが、死んだ人に宛てた曲で名曲というものをてんで聞いたことが無い。
 もしかしたら今まで聞いた名曲の中で、そういう由来のものはあったかもしれない。というか多分ある。
 命とか心みたいな綺麗事を用いずに哀しみを描いた曲にはやはり名曲が多い。
 それらには全て、「有無を言わさぬ説得力」があるからだ。
 乱暴なまでに聞く側を巻き込むような、第三者でいることを一切許さぬような、ともすれば立ち直れぬような、とても強い力が。

 そのバンドは結成の由来から、その亡くなった人への哀しみが根幹にあり、全ての曲はその人に宛てたものだそうだ。
 そして悲しむばかりではなく、楽しい曲で皆に愛を届けたいらしい。
 とっても素敵な動機とモチベーションだと思う。人柄はいいんだね、やっぱり。
 でもセンス無いね。

 誰もがそこを有耶無耶にするけど、センス無いっていうのは、罪なんですよ。お金が発生する場所では。
 センスも演奏力も、練習や聞き込み、広く言うと投資をすれば獲得し研鑽することは幾らでも可能なものなんだよ。
 それをしないっていうのは、やっぱり罪なんですよ。お金払う人を舐めてるってことなんですよ。
 そして動機が亡くなった人への手向けと言うなら、亡くなった人に対しての冒涜そのものなんですよ。
 おまけにそんな口上を人前で述べて、さほど研究もしてないものを有償の場で披露するって、詐欺以外の何なんですか?

 ここでこき下ろしまくってるバンドについて補足するが、別に本人たちは同情してもらおうって意図は全然ないと思う。
 重ね重ね言うが、美しい動機で音楽やライブに望んでると思う。実力不足なだけで。
 周りがその美しい動機とやらにほだされて、新興宗教みたいに愚図で不気味な感動の仕方をしてるんだ。
 醜いったらないよ。
 そんなものは感動じゃない。

 道徳の授業でしか命の生死を習っていない、貧相な人生を送っている人間には分からないと思うが、
 世の中には死ぬより辛いことや不幸がれっきとしてあるんだな。
 死ぬとか壊れるとか、そんなものはただの結果に過ぎない。
 そして貧相な人間ほど日頃他人の魂や命、心や尊厳を乱雑に扱う。
 滑稽なことに、そうして死んだ人間に対して「辛かったね、可哀想、悲しいね、同情しちゃう」となる。
 頭に妖精でも飼ってんのか?
 お前が殺したんだろうが。
 こういうのは加害者ほど自覚が無い。反吐が出る。

 人の命や不幸をダシに使うのは全然構わないというか、どんどんアピっていけばいいと思うけど、
 それに見合った名曲書けよな、ただそれに尽きる。
 この記事みたいにクオリティ低けりゃボロクソに言われるリスクもあるけど、
 それならむしろ責任重大で慎重さが要求されることをやってる、っていう自覚を持つべきだよね。
 ま、そういう商売、結構前からの流行りだから、僕からするとナンセンス極まりないけど。
 その手の不純物に僕はもう、ほとほと呆れ果てて、言葉も出ないんだ。すっかり。

 僕は想像力が豊かで知識も経験も豊富だ。
 口に出したり自慢したりするのが格好悪いと思ってるから一切しないし、
 無言ゆえに僕を無知だと思い込んで見下すクソバカが死ぬ程いるが、僕はこの道を貫く。
 それが僕なりに何かを大切にするという事だ。
 まぁこれは僕が想像力が豊かで知識も経験も豊富で、おまけにセンスもあってかつ努力家でスタイルがよく性格もユーモラスで快活、友達思いで自分に確固たる自信があるから出来ることなんだけど。
 (自信ない奴ってこういうの冗談って分かんねえんだろうなー……めんどくさいし気持ち悪いよね、軽蔑しちゃう)

 僕は音楽が大切だ。
 そんな僕だから、言葉なんか無くたって音楽一つで感動も出来るし、苦しみもする。理解できる。
 誰だって出来る。
 いい曲が僕を育ててくれた。いい曲だけが、君にそれを可能にさせてくれる。
 逆に音楽への愛が足りないものは一切理解できない。例のバンドのようにね。
 せめて死んだその子への愛情の、十分の一でも音楽にぶつけているなら多少は優れた曲が生まれるだろうに。
 ま、それはつまり結局オママゴトなんだろうね。
 哀しみを安く陳腐なものにして、周りに押し付けて同情を買ってることに早く気付いてください。
 そんな醜い光景に、僕は憎しみが溜まる一方です。
 お前らは音楽を侮辱している。
 お前らは命を侮辱している。
スポンサーサイト