07
2017

ホルモン

CATEGORYたわ言
 ホルモン焼き美味しい、ミノとかシロとか、ああいういつまでも噛めるもの好きだ。
 のホルモンではなく。

 10代の頃、今よりずっと生きるのが辛かった。
 若いうちからとか、誰かに言われたような気もするが、若いから異様に辛かったよ。
 目に入るもの全てを記憶に留めて、耳に入るもの全てを聞き逃すまいとして、口にするもの、嗅ぐもの、全部に常に神経を張り巡らせてた。
 誰かが何の気なしに発した言葉を、360度あらゆる角度から分析しようとして、どっこいその真意って奴はちっとも理解できなくて。
 永遠って奴を無理やり口に突っ込まれるような気持ちだった。
 いつも気持ちが悪くて、吐き気がした。
 いつも居場所がないようで、自分は世界を構成する物質全体から爪弾きにされてる気がしてた。
 空は今よりずっと広くて、重かった。
 土は今よりずっと汚くて、やわらかかった。
 鉄は今よりずっと冷たくて、鋭かった。
 花は今よりずっと鮮やかで、いつまでも咲いてた。

 今でもその感覚は残ってるんだけど、あの頃よりはずっと楽だ。
 そもそも何故あんなにピリピリしてたかと言えば、”異様な危機感”に尽きると思う。
 何時殺されるか分からない、どんな理由かも、今にして思えばそんな風に感じていた気がする。
 体験の刺激や魅力、その情報量は繰り返し味わうことで減衰していくものだけど、
 10代の頃なんてどれも初めての体験だし、僕は人一倍臆病だったから世に抗う術っていうのをてんで持ってなかった。
 毎日が絶体絶命だったよ。他人がどうして暢気に生きてるのか心底理解できなかった。それも不気味だった。
 明日死ぬかもしれない、拒絶されるかもしれない、嘲笑されるかもしれない、追い出されるかもしれない、etc
 明日どころか、それはこの後すぐかも、なんて常に考えてた。楽に寝付けたことは殆ど無かった。
 誰かに助けて欲しかったけど、それは誰かにとか、どうやってとか、そういうレベルではなかった。
 友達もそこそこいたし、親は大らかで理解があるし、環境としては恵まれていた方だ。環境では覆せなかった。
 音楽があって、かろうじて命拾いした、そんなところだ。それも環境、のおかげなんだけどね。

 今気楽に過ごせるのは「脳内物質の分泌量が安定するようになった」、という極めてフィジカルで合理的なギミックがあると考えている。
 少なくとも僕が心理的、精神的に向上して外的ストレスを克服したのではないと思う。そんな安っぽい話じゃないし、別に向上はしてない。
 時間が解決する、というのは凄く嫌いな考え方なんだけど、薬効的に考えたら、思春期の根拠の無い不安感は確かに時間が解決すると思う。
 でもそれは「際立った問題が発生しない状態」であって、やっぱり解決してるわけじゃない気がする。
 例えば今まさに悩んで苦しんでる子たちに対して、やっぱり、僕は何もしてあげられない。
 抱きしめてあげたり、頭を撫でてあげたり、そのぐらいだと思うけど、そういうのすら屈辱的で鬱陶しくて、されたくてたまらないのに心底ムカムカするんだものね。
 かといって絶対に何も言われたくないんだ、「分かるよ」とか「大丈夫だよ」とか「若いのに」とか。殺意すら湧いたもんだ。
 そういう自分に対してもね。

 でもアレだけ脳内物質がお盛んで、良かったなって思ってる。
 あの頃人間は化け物以下の汚物に感じていたけど、その分世界はずっと色鮮やかで、香り豊かで、芳醇で濃厚で、音は七色で、風に歌があって。
 感動だった、世界がただ世界であることに、とても感動してたから。

 この考え方に至って、そこらの蛆虫みたいな人間が俺にはようやく少し理解も出来た。
 まともで退屈な脳みそ腐らせてんだなって、それだけの話なんだよ。
 何かに怯えることも、縋ることも、感動することも、味わうことも、気持ちよくなることも、そういうのが全部「まぁまぁ」ってこと。
 そんなのやっぱり人間じゃない。ロボットだ。ロボットはミスをしないから、ポンコツ出来損ないゴミロボットだ。
 同世代を見てよく思ったよ、「どうしてこいつらは自分の感情をそんなに理解できるんだ?」
 「どうしてこいつらはそんなに、世の中に馴染んだような身振りができるんだ?」
 「どうしてこいつらはこんなに、偉そうなんだ?」
 ってな。
 簡単な答えだったよ……。
 大した感情を持ち合わせておらず、だから少ない手間で運用できて、それで上手いことやれてるから傲慢になる、疑問を持たなくなる、それだけの話だった。
 つくづくつまらん存在だ。死ねたら及第点だが、それすら出来ない、その程度の感情のエネルギーを持ち合わせてもいないクズ。
 だから俺は志願者には死ねと言う、今までも言い続けたしこれからも言う。
 死にたきゃ死ね! 死ねて二級なんだテメエは! 一級ならとっくに超派手に死んでる!!
 その死にたい気持ちが本当なら、僕は君が好きだ、死んでそして生き返ってともだちになってくれ。
 さあ死のう、いつか死ぬそのときに。死にたい君だけが本当に愛される理由を持てる世界だから。
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