ほぞ

 芋煮や、
 ゴミ捨てのルールや、
 あいさつ運動や、背の低い花や、
 量販店の服や、
 誰も出歩かない夜の駅前や、
 好きな子の部屋の灯りや、
 しけた畑があるだけの小さな山や、
 テレビしか話題が無いことや、
 切れかけの街灯が、
 心底嫌いだった。
 本当に嫌いだった。
 みんなが不眠症の変態だったらいいのにと望んだ、

 身体中に塗りたくったジャム、あとでシーツがべとつくとか、そんなことは考えなかった。
 指に付いたそれを舐めとる仕草がセクシィじゃなかったら殺すの。
 芯から欲しい唾液は甘い味すらする。
 熱病みたいにクラクラする、怯えて痩せてやつれた少年が少しだけ目の色を変えて、それがまた気持ちが悪い。

  「現場監督の末路って知ってる? 末路。
 僕の知り合いで、下請けがクレーン車倒して隣のマンション2人殺した責任取らされた奴がいるの。
 日本には6000以上も島があるんだけど、その島の一つで、何も無い部屋の一室でね。
 そいつ壁ずっと見てる。
 真っ白の。
 これ見て反省してくださいって。一日八時間」

 折り鶴を折って、最後に腹を膨らますとき、僕のを取ってしれっと息を吹き込んだ。
 骨が上下して皮は隆起してそれが戻って、綺麗な喉笛だなって思った。
 その瞬間、罪悪と後ろめたさに、自分の感情を恨んだ、感情があることを恨んだ。
 机と喋る、引き出しは鉛筆の戦闘機と消しゴムの爆弾、それ以外は特に要らないって。

  慣れない草冠の作り方、指先は草の匂い、爪の間に緑の液、曇った空が妙に綺麗、
 下級生がはしゃぐ声、気が狂いそう、グラウンドに強い風が吹いて砂が脛に当たる、目に入って涙が溢れる。
 知り過ぎた子供、自然は狂気を孕んでいた、小川のせせらぎで骨が腐りそう、腹這いに死んだ蛙。
 でももういいんだ。

 ジェラート、岩礁、白いサーフボード、野球帽、
 シロツメクサ、ストライプのスーツ、太鼓の音、
 ウサギの着ぐるみ、澱んだ白目、小さな車、シャボン玉、
 遊覧船、モヒカン、ゴミ収集車、口笛、鬱陶しいラジオ、
 爪先の尖ったブーツ、濡れた雑誌、冷たい手、誘拐犯、試遊機の行列、迷子放送、
 潮の匂い。

 「大往生した爺さんの献体を開腹したんだけど、正直体の中身より馬並みにデカいペニスにたまげたもんだな。
 女の子なんか「すごーい!」ってまたそれをビヨンビヨン遊ぶワケ。
 医学の発展っていうか、まぁそりゃ仕方ないなってくらいの感じ。でもアレ見て献体はよそうって思ったね」
スポンサーサイト