酩酊

 世の中色んなことが前借りとして作用してると思うけど、ここ最近は特にお酒との付き合いが根深い。
 しかし酒の席で食い違う前提として、世の中には「酔うのが好きな人」と「お酒そのものが好きな人」の二つが、あんまり当人も区別できてないことにあると思う。
 俺はもっぱら後者だ。呑まれたいときもあるけど、そういうときは、呑んだところで大して酔えなかったりする。
 昔はよく分かんないで「これを呑めば比較的早く死ねるんだろ?」と思って呑んでたけど、今は酒の味自体が好き。
 でも身体に良かったら多分呑んでない。俺、身体にいいやつ嫌いなんだよね。

 他の人を見てて思うんだけど、みんな酔うのが早い。
 一応新潟の血も半分入ってるから、俺が少しだけ強いのもあるけど、多分酔いたくて呑んでるから早いんだと思う。
 素面、ほろ酔い、酩酊、泥酔と三段階に分けて、自分は素面が長くてほろ酔いが凄く短い。そのあとずっと泥酔。
 これめっちゃ損だなって思う。

 いわゆる酔っ払いの話題って、俺からすると全然面白くない。特に素面(まだ酔ってない)のとき。
 アツいっていうか、それただの正論で中身全然ねーじゃん、とか。
 悪口っていうか、ただの不平不満じゃんそれ、しかもお前にも非があるし、語彙や言い回しが貧相でユーモアもない、とか。
 当意即妙な言い回しとか、偉大な発見とかは全然求めてないんだけど、膨らませる気ないだろっていうのが多すぎ。
 酔った時こそ、そいつにしかない哲学、狂った美学みたいのが聞きたいんだけど、逆に酔うと皆同じこと言う。最悪。
 特に悪口に関しては、俺は人のことを単にけなすのが凄く嫌い。無意味だから。
 「こうすればもっと良くなるのに」っていう意図でしか何かを否定することって、絶対しない。よく誤解されるけど。
 だから周りが一個人をボロクソに言い出したら、けなしつつもそいつを褒めたりするのが好き。
 そういうときに自分の発言から、あ、そういえば、そういうとこあるなって気付いて、本当にちょっと好きになったりする。お花畑か。
 逆に皆が褒めちぎってるものは否定したくなる。単なる天邪鬼だな。
 だって俺は酔っ払うからには、面白い悪口か幸せな話がしたいし。みんなそうだと思うけど。
 でも盛り上がるのとかは、殆ど興味ない。そんなの副産物でしょ。盛り上がるために酔うのってナンセンスだと思う。
 多いよね。

 腹を割った話とか、知的好奇心の話とか、大事な話とか、そういうのは逆にお酒要らないと思う。
 っていうか、それはむしろ素面のときにしろよっていう。
 なんで頭悪い状態になってから理性が必要な話すんだよ、頭の中の妖精まで酔っ払ってんのか。
 これも多いだろ。大嫌いだなー。
 よく皆誤解してるけど、酔った状態って感情のブーストじゃなくて、感情のリミッターだと思う。
 人間の感情って喜怒哀楽の喜と怒と哀と楽の間に無数の感情があるけど、酔うとそれが喜怒哀楽のみになる、気がする。
 ホースの蛇口を狭めると水圧が高まるのと同じで、結果的にブーストしてるように感じるという。
 でもそれって、複雑なことを捉えられなくなってるだけだよね。
 だから難しい話は素面の時にした方がいいと思うわけ。

 呑んだ量≠酔いの深さ、なのも業が深いよね。
 個人的に、酔う早さは体調に関係なく、その人はその人の固定のペースってのが大まかにあると感じる。
 勿論家で呑むリラックス状態と、外で呑む、あまり仲良くない人と呑む、っていう緊張の状態で差異はあるだろうけど。
 俺にとって酒飲みってのは、「自分の酔う早さ、醒める早さを把握して、ずっとほろ酔いをキープできる人」だと思う。
 意外とこれが難しい。ペースは固定のはずなんだけど。でも出来たら最高にかっこいいし、周りにも幸せ御裾分けできるよね。
 結局俺は、酒の味が好きになったところで、「早死にしたい」欲が湧いてきてがぶ飲みしちゃうのが良くないんだろうな。
 酔うのが追いつかないうちにがぶ飲みすると、素面からほろ酔いをスルーして一気に泥酔まで行っちゃうんだよね。
 そして自分は泥酔すると無軌道に暴れまわる傾向があるから、そうなると話もしないで一人で殻に篭るか帰る。
 殻に篭ると破壊衝動が自己否定ベクトルに噴出してくるから、蒸発するか身近な人間をぶっ飛ばしたりする。どうしろと。
 自分が嫌いな酔っ払い(おまけに最悪の部類)そのものになっちゃうんだな。
 要するに、自分に限らずハイピッチな呑み方はいいことが一つも無いって事だ。

 酔った状態はセロトニンの前借り、と聞いたこともある。
 これは、そうだろうな……。
 別に酔ってなくても、「幸せだったなぁ」と思って家帰ると絶望がやばいときあるけど、呑んだ日の翌日も同じことが起こる。
 また悪夢なのが、嫌な呑みになったときも、絶望はやってくるってことだ。なんだこいつ。何しに来たんだ。帰れよ。
 それなら尚のこと楽しく呑むべき、明日の幸せも使ってるってことを考慮すべきなんだけど、
 って、ここまで考えると酔うのってリスキーすぎないか? メリットよりデメリットの方が圧倒的に多いじゃん。
 なんで皆そこまで呑むんだ? 俺は早死にしたいからだけど、お前らどうせ長生きしてーんだろ? バカ?

 というわけで、何が言いたいかというと、家呑み最高! ってことだ。迷惑もかけないし、かけられないし。
 酔うと人格変わったり饒舌になったり笑い上戸になったり、エロくなったりやたらボディタッチが増えたり、普段出てこないようなアイディアが出てきたり。
 なんだかんだ予想がつかなくて面白い。酒は人を駄目にするんじゃなくて、人はもともと駄目だってことを教えてくれる。
 そうさ僕らはチンカスさ!
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