スキルアップ

 会場について書いてて思ったのだが、いまいちフックアップが弱い世界だよな。
 殆どの原因が演者側のプライドの低さ、研鑽の低さ、知識の低さ、欲求の低さに尽きんだけど。
 ライブハウスが怖くなくなった頃とほぼ同時期に、そういう人種がドバーッとあらゆる表現の場に流れ込んできたわけだ。
 よく言えば間口が広がったし、悪く言えば人前で何かをやるクオリティでもなければ、そこを目指すという気負いもない不純物が増えた。
 俺個人の考えはともかく、ライブハウスはそういった人間も快く受け入れる。
 「来るもの拒まず、ただし自己責任で」。それがライブハウスの本質だから。
 駆け出しの頃はそれが嫌で仕方なかった。
 周りがやる気も向上心もないカスばっかりなのが本当に鬱陶しかったが、段々「それでもライブハウスは断らない」ことの意義も崇高さも理解できるようになった。
 先達たちの、あらゆる「やりたくても出来ない」という無念や苦渋の思いが今のライブハウスの入り口を作ったんだということが、ようやく分かってきた。
 ぶっちゃければ、ライブハウスがそういう人間を断るような場所なら、俺もまた演者として育ててもらうことは有り得なかったかもしれない。
 だからこそ幾つかのライブハウスは懐が厳しくなると分かっていても、そういう人間を受け入れ続けているのに対して、ステージ上でふざけたことをするのが、本当に赦せない。
 そういう思いもますます強くなった。

 自己責任で、とは言うものの、もう少し演者側の意識を喚起することは出来るんじゃないかって思うんだよね。
 演者とお客さんの垣根は破壊されたが、それによって、あまりにだらしなくなった現状は極めて不健康だ。
 「あまり厳しいことを言うと辞めてしまう」「他にも楽しいことがある時代」「それも含めての音楽だから」
 そうかもね。結局気付く奴は勝手に気付くし、気付かない奴は一生気付かないで同じことをやる。
 そうかもね。事実俺は先輩の姿勢から学ぶことはまだまだ沢山ある。
 「え!まだ格好いいとこ見せちゃうの!」って、何回惚れ直してるか分かりません。3日前もいっぱい見せられちゃったな。
 ただ俺は、確かにハコ側の人間から見当違いなご指摘を貰うことも度々あったが、別にそれが嫌だとは思わなかった。
 むしろ右も左も分からない頃は、「そういう視点もあるのか」っていうのが本当に有り難かった。今でも嬉しい。
 多分今の世代全般が思ってることじゃねえかな。結局どういった形でも構ってほしい、見て欲しい、そういう願望は多少なりともあっただろうよ。音楽を始める動機には。
 まぁ嫌な思いするとすぐアレルギー起こして排除しようとする傾向は、確かにある。俺も自覚がある。

 ぐずぐずと進歩がないことに関しては、要するにそれを言葉か態度で教えてくれる、先輩に位置する人間がいないことが原因だろう。
 あるいはついていく人間を間違えたか。(これはそいつ自身の責任だな)
 でも先輩も暇じゃないから全員は見れないし、見込みのなさそうな奴は放置されるし。
 すると年下が構ってくれないどっかのロートルがそいつを捕まえて、気持ち悪い縦社会が形成されるという。
 そうなるともう、目も当てられないな。関係ないところでやってくれりゃ何も思わんけど、とにかくもうそいつらの景気の悪さは異常。
 貧乏神みたいなもんだから、出来れば無人島へ行ってほしい。
 大体、しくった年寄りの言う事聞いても「良くてお前のレベルに行くだけなんだろ……??」って思ったら、聞く気になんねえよ。
 誰が万年平社員のアドバイスなんか聞きたがるか、面倒がられてる自覚持てよ。

 最近なんとも喉に引っかかる話を二つほど聞いてしまった。
 一つはこういう会話。
 先輩「○○(有名バンド)結構好き?」
 俺「そうですね、結構好きです」(憧れるくらいには)
 先輩「○○と対バン出来るなら幾ら出す?」
 俺「いや出さないっす(即答)、それで対バンできないなら対バンできないでいいです」(こっちからその高さまで上るだけだし)
 (しばらく間)
 俺「誰か大御所呼ぶんですか?」
 先輩「いや、後輩が今と同じ質問ハコからされて、『五万で!』って言ったら『じゃあノルマ五万で』ってなったんだと。実際に対バンできるからいいけど、バカだよなぁ」
 俺「そ、それは交渉が下手すぎますね……」

 ギャランティーを払って大御所と対バンする、というのはままある話。
 目的はジャイアントキリングだったり箔付けだったり集客だったりするけど、今回の場合はその「後輩」が自分の音楽を値下げしてしまったなぁ、という印象を受ける。
 俺はその「後輩」を全く知らないし、速攻で名前も忘れてしまったが、おそらく汗水垂らして取り返しのつかない時間や投資をしたものが五万ってことは無いと思う。思いたい。
 勿論何を考えてるのか分からないから否定はしない。
 五万払ってでも憧れのバンドと対バンっていうネームバリューが得たい、憧れのバンドが好きなお客さんに見てもらって判断してほしい、そして勝つ自信がある、それならいい。
 やり方の一つだと思う。そこまで考えてたらむしろ賢い。正直まどろこっしいし、初めから分かってもらえてたらハコは最初からノルマはかけない気がするが。
 あ、ちなみにノルマ五万は相場からしたらかなり高ぇよ。ブッキングではまず有り得ない金額。

 もう一個は、えーと、かなりぼかして書くけど。
 イベンターの企画で弾き語りの人が2人出てたんだけど、1人はそこそこ呼んで、もう一人は集客ゼロだったんだって。
 でもギャラは均等に発生してて、ハコ側からすると集客ゼロでギャラ必要な人は、さすがに出演してほしいとは言えない、という。
 これは二人とも俺の知ってる人で、かつ近い(というかほぼ同じ)シーンだから集客被ってたかも。
 だけど、そもそも少ないパイを奪い合ってる状態が、やはりすでに景気が悪い。
 大体毎回同じメンバーと再会、友達ならそりゃ楽しいだろうが、ライブでそれじゃあ、なんでライブやってんだよってなるじゃん。
 個人的には、俺だったらそのギャラは受け取れないな、って思う。なんか甘えちゃいそう。頑張る気失くす。
 まぁいいんだけどさ。そのイベンター、いかにも「イベンター」って人種で、物分り悪くて俺嫌いなんだけど、やっぱり分かってないんだな。

 はぁ。
 バンドマンっていうのは、人種でもなければ、職業でもなく、バンドをやってるというわけでもない。
 ロックンロールと一緒で、音楽のジャンルとか名称とかじゃなくて、そういう「生き方」なんだよね。バンドマンという生き方。
 世界一乱暴で美しく、群れることを嫌い、一切の秩序を否定し、自らのルールにのみ従い、病める魂に豪快に笑い返す。
 たおやかでしとやかな獣。絶滅危惧種ピエロ。
 俺はバンドマンです。そう胸を張って生きていきたい。誰に褒められることもけなされることも厭わない。
 孤独でか細い、今にも消えそうな、すがるような思いで音楽を貪る、そういう人たちの為に全てを捧げたい。

 俺はバンドマンです。
 それ以上でもそれ以下でもない。
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