活動

鳩 正義

Author:鳩 正義
Ghetto HP
Ghetto

出演-------------------
9/8@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
「KANTA dAb dAb Japan Tour」(from Nepal)
21:00~

9/10@両国SUNRIZE
「両国ウルトラソウル ハァイ」
21:00~

9/28@両国SUNRIZE

10/4@両国SUNRIZE
※弾き語りでの出演

10/22@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

11/1@両国SUNRIZE
「両国SUNRIZE 8周年 初日!」

11/5@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

12/14@両国SUNRIZE
​「???」


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悪童の乖

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身(褥/臀/胎)

08 19, 2017 |

 寝台は少しスプリングが安っぽい。読書灯は仄暗い。外も霧が濃い。
 耳をくすぐるような女の鼻歌、壊れたようにアタックの強いピアノ、階段をボールが転げ落ちるような旋律。レコードノイズが激しい。バーボンを舐めると、それらのチューニングは私の耳に帳尻が取れたように揃う。
 じっとしていても汗ばむほどの湿気で、アキレス腱の革靴に当たる部分が擦れてかぶれている。
 女の腰、縫工筋の付け根辺りにも同じものがある。パンティのゴムか、蟲にでも噛まれたか、それとも何らかのアレルギーか。
 最近減ったけどクラブのトイレで吸うようなヤツはダメね、臭くなることもバレてるってことも分からないの。まだコーク嗅いでその場で始めちゃう方がマシ。
 昨夜にも聞いたような気のする台詞。返答は愚か、意味を理解することさえ億劫に感じるほど、幾度も記憶を掠めた気のする。
 夜毎同じ台詞、同じ思考、同じ習慣を繰り返しているような錯覚に陥る。
 もう殺してしまおう。そもそも愛着もなく、都合や利益や打算などというのは自分にとって何も重要ではないのだから。
 こんなことも何度頭をよぎったか分からない。その度にいつも手慰みに撫でるナイフの刃先や、バールやロープの購入画面を眺めてウィンドウを閉じるのは、さほど楽しくもないだろうから、という確かな予感だ。
 何が何でも殺してしまいたい。きっとそういう類の欲求に駆られたなら、何も躊躇うことはないのだ。

 兎の世話をしたり、朝顔を育てたり、草むらに寝転がってみたり、つくしを集めたり、そういったことが酷く焦がれる。
 年老いた人間の郷愁には違いないが、どうにも周りの人間がする遠くを眺めるような眼差しや、声の上ずり、頬の染まりや高揚には共感しかねる。奇妙な差異を感じる。あらすじは同じなのに、結末の違う映画を見ているような。
 あの頃は楽しかった、戻りたい、そういう気持ちはまるで無い。おそらくそこが違うのだろう。
 私が焦がれている理由はおそらく、戻れるならば全てぶち壊して台無しにしてしまいたい、今それを行う者を痛めつけ虐げてペールエールでも飲みながら小便をひっかけたい、そいつの大事にするものを反故にして弄びたい、そういう下卑た欲求に基づくものだ。
 しかし、それの何がいけないというのだろう?
 過去を変えることは出来ないが、自分より若い者に干渉し操作することは、限りなくそれに似ている。
 言うなればこれが、援助交際などといったものの実態だろう。失われた青春の回顧や簒奪などではない。
 しかし皮肉だ。若い女を買う者は幾度過去に戻れたところで、おそらく一般的に価値のある青春などというものは味わえないだろう。
 そして味わった者は過去に戻りたいとも、今若い女を手篭めにしたいとも、別に思わないのだ。
 学生の頃大人相手に金稼ぎをする女をこそ尊敬はしたが、同世代に相手にされないから売春に走った女は心底軽蔑していた。
 ああ、この構造、附子な若い女に自らの青春を幻視する愚かな中年、老いた男の経済力に自分の価値を幻視する附子、この二者こそ殺して楽しいものだろう。

 そこまで考えたところでライラックの香水が、頭蓋を突き抜けるほど鼻腔を刺した。
 何考えてるの? いつもそれが知りたいのに全然教えてくんないし、でも知ったら多分つまんないんだよね、こういう言い回し好きでしょ? あたしのこと好きじゃないのが何からも伝わってくるよ。
 この女の言っていることの何もかもが理解できない。好意も抱かない。便利な道具だ、汚れのよく除去できる洗剤だ。人間は他者の心情を動かせないなら物に等しい。マネキンだ。この女は美しい。私が知る限りでも上等なマネキンだ。実に、便利な道具だ。
 私は附子に嫌われるが、マネキンには何故か好まれる性質を持っている。
 マネキンは誰かに所持されることを表面的に望むが、本質的には自由な気質を持っている。私はそれを遠くから眺めているのが楽しい。服が触れ、肌が触れ、肉が触れ、髪の匂いが鼻を掠めるにつけ、疎ましく感じる。
 話すだけのマネキン、触るだけのマネキン、壊すだけのマネキン。道具は使い分けるものだ、であれば、そのように使い分ければいい。これはいいアイディアだ。私はこのアイディアに確信を持った。
 女が肋骨と外腹斜筋の継ぎ目に舌を這わせたとき、私は嘆声を上げながら二つのトルソーの購入を決意した。
 この夜は反復ではない。発達のある夜だ。この胸の高鳴りのままにこの女を解体してしまいたい。しかしこの場にはバールもロープもナイフも洗剤もゴミ袋も無い。
 ああ勿体無い。何故用意しておかなかったのだろう。そうか、いつも手元に置いておかないから、結局のところ私はこの女をトルソーにすることに躊躇い続けていたのかもしれない。
 明日は一式ホームセンターで用意してこの女を迎えよう。それがいい。ようやくこの夜の反復が終わる。
 この女を私のトルソーにしよう。
 一週間は私の気が晴れるだろう。
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