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失語症

 「物事ってさぁ、大体がいい面と悪い面と両方あって、本当の悪も正義もどこにも無いって言うじゃん?」
 「…………」
 「でも本当にそうなのかな、世の中には”やっべーなコイツ、マジで根っからの善人だ”っていう人もいたりするし。そういう奴見ると、まるで普通の自分が悪者に見えてくるし」
 「…………」
 「ってことはだよ、関係ない他人に引け目や負い目を感じさせるソイツは、やっぱり悪なんじゃないかって思ったりする」
 「…………」
 「これは、心情的には否定したいところだけどね。こっちが勝手にコンプレックスを感じてるだけなんだから。でもってこれがSNSに散見されるヘイトの正体なんじゃないかと僕は思うわけ」
 「…………」
 「みんな幸せそう、いい人そう、それに比べて自分は。全部これに尽きるんじゃないかな。承認欲求とかもさ、目立ちたいんじゃなくて本質では”善人”になりたいと思うんだよね」
 「…………」
 「今じゃ定着したメンヘラも、善人になりたいけどなれないんですアタシ、みたいな開き直りだったりするでしょ」
 「…………」
 「そもそも”いい面と悪い面”自体が何と比べてだよ、って話だよね。模範的な個人? 常識? モラル? 法律? どれも変動的なものでやっぱり絶対じゃない」
 「…………」
 「今の時代の”いい人”ってなんなんだろうね。文句を言わない人? ぶっちゃけ胡散臭くない? 欠点を指摘せずに改善できることなんて上辺だけだと思うし」
 「…………」
 「正直な人? なんでもかんでも真っ当に言えばいいってもんでもないよね。正しいことが正しいとは限らないしさ。さっき言った誰かのコンプレックスを刺激することにもなりかねない」
 「…………」
 「そしたらいっそ弱者そのものってどうかな。誰が見ても同情する哀れで愚かで無知で、要するに無害な人。なんかやだなぁ、そんなのが”いい人”だなんて。それはどっちかというと、”何者でもない人”だよね」
 「…………」
 「やっぱり”いい人”なんていないのかもね。いい面悪い面もさ。気が滅入るな、正解が無いなんて。これが商品だったらクレームものだよね。完成しないパズルだぞ、ゴールのない迷路だぞ、オチのない小説だぞ、欠陥品だぞコレ、って」
 「…………」
 「まぁでも、ある程度の段階で皆そういう、欠陥品であることを受け入れて生きてるっぽいよね。それを多分大人って呼ぶんだと思うけど。どうしてかアレが、僕には一番悪人に見える」
 「…………」
 「大体が”お前も早く諦めろ”ってなことを言うよね。それと比べたら、完成しないと分かっててもパズルに挑戦する人、ゴールが無いと分かってても迷路を突き進む人、オチが無くてもその続きを創造しようとする、そんな人って魅力的に感じる。例え周りからすれば間違いでも、理解されなくても」
 「…………」
 「うん、なんだかいい感じがする。まとめると”いいもの”は間違う人、”悪いもの”は諦めた人。これどう?」
 「死ね」
 「…………」
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