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鳩 正義

Author:鳩 正義
Ghetto HP
Ghetto

出演-------------------
9/5@池袋adm

9/8@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

10/22@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

11/1@両国SUNRIZE

12月未明@両国SUNRIZE


チケット予約は下記メールまで。
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悪童の乖

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ほぞ

04 17, 2017 |

 芋煮や、
 ゴミ捨てのルールや、
 あいさつ運動や、背の低い花や、
 量販店の服や、
 誰も出歩かない夜の駅前や、
 好きな子の部屋の灯りや、
 しけた畑があるだけの小さな山や、
 テレビしか話題が無いことや、
 切れかけの街灯が、
 心底嫌いだった。
 本当に嫌いだった。
 みんなが不眠症の変態だったらいいのにと望んだ、

 身体中に塗りたくったジャム、あとでシーツがべとつくとか、そんなことは考えなかった。
 指に付いたそれを舐めとる仕草がセクシィじゃなかったら殺すの。
 芯から欲しい唾液は甘い味すらする。
 熱病みたいにクラクラする、怯えて痩せてやつれた少年が少しだけ目の色を変えて、それがまた気持ちが悪い。

  「現場監督の末路って知ってる? 末路。
 僕の知り合いで、下請けがクレーン車倒して隣のマンション2人殺した責任取らされた奴がいるの。
 日本には6000以上も島があるんだけど、その島の一つで、何も無い部屋の一室でね。
 そいつ壁ずっと見てる。
 真っ白の。
 これ見て反省してくださいって。一日八時間」

 折り鶴を折って、最後に腹を膨らますとき、僕のを取ってしれっと息を吹き込んだ。
 骨が上下して皮は隆起してそれが戻って、綺麗な喉笛だなって思った。
 その瞬間、罪悪と後ろめたさに、自分の感情を恨んだ、感情があることを恨んだ。
 机と喋る、引き出しは鉛筆の戦闘機と消しゴムの爆弾、それ以外は特に要らないって。

  慣れない草冠の作り方、指先は草の匂い、爪の間に緑の液、曇った空が妙に綺麗、
 下級生がはしゃぐ声、気が狂いそう、グラウンドに強い風が吹いて砂が脛に当たる、目に入って涙が溢れる。
 知り過ぎた子供、自然は狂気を孕んでいた、小川のせせらぎで骨が腐りそう、腹這いに死んだ蛙。
 でももういいんだ。

 ジェラート、岩礁、白いサーフボード、野球帽、
 シロツメクサ、ストライプのスーツ、太鼓の音、
 ウサギの着ぐるみ、澱んだ白目、小さな車、シャボン玉、
 遊覧船、モヒカン、ゴミ収集車、口笛、鬱陶しいラジオ、
 爪先の尖ったブーツ、濡れた雑誌、冷たい手、誘拐犯、試遊機の行列、迷子放送、
 潮の匂い。

 「大往生した爺さんの献体を開腹したんだけど、正直体の中身より馬並みにデカいペニスにたまげたもんだな。
 女の子なんか「すごーい!」ってまたそれをビヨンビヨン遊ぶワケ。
 医学の発展っていうか、まぁそりゃ仕方ないなってくらいの感じ。でもアレ見て献体はよそうって思ったね」

教会

04 17, 2017 |

 神様、夜毎僕は一言ばかり眠りに落ちる前、
 「どうか目が覚めたら僕が僕じゃありませんように」と祈っているのに、ついぞ叶えてくれることはないのですね。
 大人達が礼拝堂で説教を聞いている間、子供の僕たちは談話室で絵を描いていました。
 僕はパルテノン神殿をクーピーで模写しました。
 それを見て保母さんは「この子は絵の才能がありますよ、素敵です」と親や周りの子に見せた。

 僕はそれが酷く嫌でした。

 「こんなものは見たままになぞって塗っただけで、僕の描きたいものや色が手元に何一つ無いんだ。
 こんなものは絵でもなんでもない!!」
 と、言って破り散らしたい気持ちでいっぱいでした。
 でもそれをどう言葉にすればいいか、そのときは分かりませんでした。
 神様、僕はやっぱり、洗礼されていないから見捨てられてしまったのでしょうか?
 僕に名前は無いのでしょうか?
 お祈りの言葉もキチンと捧げられず、毎年届くクリスマスカードも憎たらしく思っていた僕を、
 そんな僕のままでいなさいと蔑んでいるのでしょうか。
 ささやかな反抗で僕は、家に帰ってからパルテノン神殿の柱に蔦を這わせました。
 埋め尽くして、絞め殺すほどに絡めて塗り潰しました。
 その茨の針が、まだ指に絡み付いて、どれだけ洗っても取れないままでいるような気がします。
 
 教会の駐車場には、割れた隙間から蒲公英が生えていました。
 よく見ようと寝そべるとアスファルトは陽射しでポカポカして、温くてざらついた感触が頬に気持ち良かったのを覚えています。
 割れた隙間はずっと奥まで細く続いていて、僕はニャッキを思い出して自分がニャッキだと想像しながら丸まりました。
 そのとき僕は一生このまま、芋虫のように這いずり回って、永久に空ばかり見上げたまま死ぬような気がしました。
 それも悪くないのかなって、思ったけれど。
 少し、泣きました……。

美しく生きたいって誓う

07 27, 2016 |

 砂をいじって作り上げた、この箱庭の世界に風が吹く。
 沢山の発見の上に降り積もる埃が、僕を嘲笑って霞んでいく。
 行き交う人の隙間、ローファーの踵が鳴る。
 過ぎ去る人の背中に通り雨が落ちる、雲の速さと同じ歩幅。
 日差しが強かった、セミの声は五月蝿かった、少年の睫毛は長かった。
 なんとなく遠くに行きたくなった、海の向こうへ、水族館の水槽の底へ。
 君が僕を犬のように可愛がる気持ち、目の逸らし方とか、笑い声の間隔で察したりする。
 君が犬のように可愛がられ、あるいは躾けられたがっていることも。

 落書きがはかどる高架下の壁、焦燥感は張り詰めたピアノ線のよう、少ない音で二の腕に縄が食い込むよう。
 眠りは浅く、胎児の様に丸くなる背中。
 この箱庭の枠の外に、行けると思っていた。それは僅かばかりの愚かな思い込みだった。
 シーツにこぼれた絵の具が沁みていくように、溶け出していくのは誰かの祈り。
 人生のある時期、ある季節、ある湿度においてのみ凶悪な切れ味の台詞。
 笑えばいい。何もかもを失って笑えばいい。
 地下室の鼠と蜘蛛は親友だった、膝の抱え方がよく似ていた、沈黙も膝をついて賞状を賜る。

 バナナフィッシュは希望だと言った。
 夢の際で僕も思う、それは確かな真実だと。
 そしてバナナフィッシュ、鮮やかな匂い、茎の産毛の感触が今も指に残る花。
 排気ガスが充満する部屋にステンドグラスの明かりが差す、ふと気付くと誰もいない中。
 振り返るとドアが開いてる、真っ白の中にやせ細った君の足首が見える。
 バナナフィッシュ、手榴弾が弾ける前に、ガスマスクをつける前に、核弾頭が落ちる前に。
 シーツが赤く染まる前に、花弁がめしべを放つ前に、機械が言葉を放つ前に。
 バナナフィッシュ、精一杯笑って見せた犬歯、バナナフィッシュ、全て灰になる前に。
 やることやって助けて、やることが見つからずやるべきことも出来ない僕を助けるべきなんだ。
 バナナフィッシュ、僕の肉を望むなら僕も受け入れよう。
 生きていることは病気のようなものだと思う、その薬や解決法や答えがバナナフィッシュになるという。
 過ちは過ちのままだと思う、甘えることは簡単だと思う、前向きになるには余りに生きた屍が多い世の中だと思う。
 だから時には、過ちを繰り返し甘えてもいいと思う。
 どちらにしても、自分の悲鳴で目が覚めることが特に減ったりはしない。

 海辺の白いテーブルと椅子、水玉のパラソル、細かい砂を足の指の間に貼り付けて、箱庭を踏み躙る。
 僕の体温を奪って子どものように眠るといい、振り子時計の足元に縋ってみてもいい。
 自転車で砂浜を派手に転んで、ひっくり返ったサンダルが波にさらわれる、麦藁帽の影にヤドカリが逃げ込む。
 時間は何かを解決するかもしれないが、僕を救ってくれることはない。

 箱庭を壊してしまいたい。それでもバナナフィッシュが訪れるまで、壊れることはない。
 何時如何なるときも離れることはない。何時如何なるときも優しくはない。
 誰も救われることはなく、得るものは無く、この道のりで君は沢山のものを失う。
 そして僕は、せめて君と同じものを、同じ瞬間に失いたい。


 誰も救われることはなく、得るものは無く、この道のりで君は沢山のものを
 失う。

プールサイド

07 04, 2016 |

 塩素の匂い。
 今日はこれから暑くなる、という予感のする朝。
 ビニールに水着を入れた小学生。
 近くの工場から鉄が軋む音、君はうっすらと涙を浮かべながらオルガンを弾いている。
 特に言葉は要らないように思った。というより、むしろ、かける言葉が見つからない。
 窓に並べた真っ赤な風車が回っている、枠にかけた水玉の傘から雫が落ちている、大粒の雨が降っていたらしい。
 そういえば、寝ぼけ眼に稲妻の光を見たかもしれない。

 思い出がどんどん崩れていくのが分かる、思い出がどんどん壊れていくのが分かる。

 思い出だろうか、自分だろうか、思い出は重いで済むだろうか、思い出は遠い目になるだろうか。

 些か情緒に欠けているように感じる。
 僕がナイーヴに過ぎるのかもしれない。
 いっそ、梔子の似合うような風貌なら良かったかもしれぬと独りごちたりもする。
 ソバージュの効いた栗色の髪と、ソバカスと、ツンと上向いた鼻、のような。
 
 大切なものから、失っていくんだよ。
 大切なものを、大切にすることは、どうしてこんなにも難しいのだろう。
 大切なものは、目に見えないと言う。
 本当かな。
 目を閉じれば見えるものを、目に見えないと言っていいのかな。
 そういう言い方なら伝わる君の感性ってやつを、時折完璧に破壊したくなるときもある。
 目を閉じよう……低気圧が分かるよ。

 ユンボが泣いてるよ、電線を噛み切るんだ、僕も項垂れよう、祈っているのかもしれない。
 ユンボが泣いてるよ、鯨の鳴き声のようだ、この周波数は君に伝わるだろうか。
 ユンボが泣いてるよ、破壊し尽くされた跡の荒野とガラクタって妙にそそるんだ、故郷のようだ。
 ユンボが泣いてるよ、何が哀しくて泣いているかも分からない、だって動くたびに鳴るんだ。
 動くたびに軋むこの音が、君に伝わるだろうか……。
 塩素は僕も消毒してくれるだろうか……。

墓を壊した、金魚の墓を。同情した。

03 13, 2016 |

 天使の囀り、ピアノ、硝子の割れる、音が聞こえる、可愛い朝が来る。
 スコッチのロック、オリーブ、エバーグリーンの詩集……哀しいことがあった。
 棺には懐中時計を差し入れ、空中で枕は撃たれる、羽根が散る、虹が枯れる、降り注ぐ、蛇が首をもたげる、陽差しの下敷きになる。

 アア、光、アア、嘔吐、地下室、蜘蛛の巣、窓、埃、喪服、アア、むし、むし、むし

 エンベロープ、ベロシティ、インピーダンス、ローミッド、エンハンサー、インシュリン、眠る春ライオン、デチューン、グリッチ、後ずさるナンシー、コリジョンコース

 嫌な匂いがする。周りにも自分からも。何か思い出しそう……友だちの家で迎えを待つ、腹ばいで嗅いだカーペット。
 虫眼鏡で覗いた。猫の毛玉と白い……ああ、これまんこの周りについてるやつだ。
 これはスナックの食べカス。
 これは新聞の切れ端。
 これは蜥蜴の尻尾、干からびた、嫌な匂いがする、酷く懐かしい、胃袋を雑巾でも絞るようにねじ切りそうな……

 彼は生きた。誰よりも強く、儚く、そして美しく生きた。そして誰よりも惨めに死んだ。彼女は泣いた。
 何度も泣いて、泣くだけ泣いて、最後には彼のことを忘れた。
 それが約束だった。

 空っぽのオーケストラに指揮棒を振る。隣の部屋からはあえぎ声、トイレの汚物入れ、蓋が開いて覗くコンドーム、シンナー臭い。
 雨の中ピエロは化粧を落としながら、張り付いた笑顔は泣いている。
 義足のバレリーナ、足がなくてもワルツは踊れる、君と最後のダンスを、トゥには未消化のトマト。
 放課後の礼拝、ベンチには幽霊がいる、写真の中では変わらないさ。シャッターを切った。

 この時計は壊れていて、オルゴールは決まってあるところで不協和音で、僕は抱きしめる、寄り添った、バネは飛び散り歯車が飛び出す、キリキリと軋む。
 30分だけ君と本当の恋人になりたい。アンコールは終わり、最後まで残る拍手はいつも君じゃない。
 いつも君じゃないといけないが、それはパーソナルな感覚ではない。僕ではない。
 「記憶を失って、また君と二人、恋に堕ちたら。
 そのときは本当のことを話せるんじゃないかって、信じていたんです」

 気泡の沈む骨と白髪に濡れて、四肢はウロコに覆われて、月がよると銃撃戦をして、ここは戦場なんだ、その返り血の中で毛布にくるまり、シケモクをまわして吸い、鎖骨に蜂蜜を塗りたくり、へその下に灰と書く。
 なんでお前がおかしいか教えてあげよう。
 いっぱいいるからだよ。缶詰だぜ。缶切りは偉いんだ、缶詰は下。れっきとして下なんだなぁ。見下しても哀れんでもいない。
 単に下。
 嬉しいだろ? 俺は缶切りだから、苛々するよ。

 FAXからピロピロと出てくる惨めな劣化コピーを見るにつけ、全身が萎んで押し花になりそうなほど溜息が出る。
 歩行者信号の下にウンザリするほどいる。
 どれもみな痘痕のような、頬の垂れ下がった、少女のフリをした老婆だ。
 一緒くたに言いたくない、バカに見えるからな、でも実際鼻が垂れるほど一緒なんだな。
 キャッチボールしよう? あの崖にボールを投げるから拾ってこい。
 早く落ちろ。

 「お前はイイヤツだな。ケツが可愛いからな。小尻の方がいいわアジアンは。どうせ年取ったら崩れるしよ。ツンと上向いてるのもいいけど、なんつうか、殴りたくなるよな。握りつぶしたら蜜柑みたいになるかな。それを考えるのは少しワクワクするんだけど、やっぱり、いいかなって思ったりする。まぁ、たまにな」

 承認して欲しい割りに、君の書類にはその判子を押す欄が無いんだけど……やる気ないの?
 それとも認めて欲しいわけじゃない、愛されたいわけじゃない、必要とされたいわけじゃないってか?
 それは別にいいけど、そうじゃないからよくないよね。嘘は上手くつかないと、処刑人が動き出すよ。
 ギョロ目で口が臭いんだ、歯茎なんか腐ったような色してるし、早くしろよ。

 水風船を2人で8階から落としただろう? 爆撃ごっこでさ。
 びしゃって水が広がって綺麗だったよな。人が落ちてもきっとああなるんだな、と僕は思ったよ。
 それで中の一つが運悪く近所のオバサンに当たりかけて、メチャクチャ怒られたよな。
 お前だけ。お前がそそのかしたんだろうって。ね。
 ゴミステーションでゴム人形を拾ってきて、2人で遊んできたときもお前だけ殴られてたな。どっから盗んできたんだって。
 別に同情はしてなかったけど。
 してなかったけど……んん、いいか。

 「見えるけど、傷は癒えるけど、大丈夫かい、血を流したままでいれるかい、何でもいいのに嫌いじゃないからってそれだけの理由でいいよ」

 人買い、売人、立ちんぼ、胡蝶蘭、夕闇通りに幻が訪れる。
 「お前あそこくせえよ、ちゃんと洗え。お前に蒼を一つあげるよ」
 チェックの靴下、ローファー、ピルグリム、新譜、蟷螂、ショバ代、鉈、ベースマン、金のブレスレット、改造人間、火炎放射器、心療内科、脱獄、煙突、マフラー、寒いね、そうだよ、見間違い、苦しむ顔、鉄パイプ、レンチ、爪剥ぎ、チンポ、デッドストック、路面電車、カッパドギア、ランブルフィッシュ、苦い苦い粉薬、ピザの宅配、シケた煙草、はァー……ァー……
 冬晴れ、チョコを齧る。同じ街でも腐って見える。缶コーヒー、ポケットの中でくだを巻く。牡丹雪、可哀相だな。
 落ちてきそうだな。
 5Bの鉛筆をよく使った。何度も往復する。君の腹の上を。その度に色は濃くなる。
 水差しに太陽が透けて、手術が終わった。

 本屋、画集を探しに来ていた。デザイン集の棚の間。そこで金属バットを振りかぶる。
 パンとチキンとを買って1961年、紙袋はチャリンコが跳ねた水と泥のシミが底にへばりついてる、9号室に帰る。デリの向かいまで。
 途中モーテルの雇われコールガールが元気?って肩を叩いた、元気、元気。お巡りはアイスを食べていた。
 ピンセットで切り傷に付着した糸くずやら食べかすやらをつぶさに取り除いた。そこで金属バットを
 ガツッ、ガッ、ツー、ツー、痛、痛、ツーーーーーーーーーーーー………

 公衆電話、キャバの案内とポラロイド、欄外に「パパになって」。
 こいつでいいや。
 花束と手紙、アイスピック、ロープ、軍手をスポーツバッグに入れて担いだ。
 噴水の傍で目を合わす。目印はオレンジのマニキュア。そう君も こいつでいいや。「擦ってろ」
 ラウンジでヒールの踵が折れた。受話器にパンティが引っかかってる。
 トラックのバックする音声。カンザス。
 バタン、キィ、キィ、ジャキッ、プルルルルル、パンパン、シュウ、ダンダンダン、グリィッ、ズブッ、チッ、ドン、ブシュッブシュッ、ドバッ、ブシュッ、ダバ、ダバ、ドボン。
 スピィィード、加速、スピィィー……ドッ、ドッドッドッ、ドッ、ドク、ドクッ、クックックックッ、ピィィィィィーーーーー…………

 クソマンコ腐れマンコ腐った子宮電柱に広告赤い文字、ボールギャグ、哀しみの、牛乳成分カンカン照り、低脂肪の紅茶、換気扇、腰を振る猿、便器に排泄物が。
 イモい女生徒、処女は売るもの、稼ぎの少ない工事、踏み切りの音は過ぎていく。冬の日には色は粉々、信号機ぐらいが娯楽化よ。
 垢抜けないのがいいんだと。でも君には教えてあげないよ、ね!

 周りが全員馬鹿に見える。自分より高位の存在や知性が認識できない。
 空虚や退屈さを玩具にする。練習もせずいつしか集めるだけが目的になる。
 静さと五月蝿さがいつも同居してる。当たり前の体験が欠如している。
 こういうときにどうすればいいのか当たり前のことが分からない。
 転移性のウィルスがいつも脊髄から脳から手足の末端までを行ったり来たりして、自分の嫌味な心を周りに喧伝してる。
 誰もが自分を見下して自分もその殻に篭って、誰かが何処かへ連れ去ってくれるという都合のいい幻想に縋っている。
 この子に限ってそんな筈が無い。体が弱いから沢山勉強していい仕事につかなきゃいけない。
 俺の腕は鉄だから、お釣りを高くから落とされても何も感じない。(クスクス)落ちた小銭を拾うにも(クスクス)膝が軋んで(クスクス)他のポケットから大事なものがポロポロ零れる。(チッ、ダリーナ)
 道を譲られるのは薄汚いから、遠巻きに笑われるのは面と向かって罵倒すれば何をするか分からない不気味な異常者だから。
 話せばどもり笑えば引きつり謝れば威圧し、落ち着いたかと思えば異様に頭をかきむしる。フケが飛ぶ。
 間が悪い、集合写真に写りもしない、面白いことも言えない、下ネタで盛り上がってるときにシケた冗談で沈黙が産まれる。どこへ行っても。
 落ち込んでる弱味を見せたくないから、空気が凍ってるのに何でもないような顔をして気味が悪い。
 でくの坊なのを自覚してますます口が重くなる。
 人の指摘が全て悪口に思える、何を言っても無駄だと決め付けられる。
 似たようなアイツはそれでも愛され、俺はいつも独りぼっちで放っておかれる。醜くて気持ちが悪いからだ。
 理解するにもワンテンポ遅く、言い訳するにも不気味なだらしない笑顔で嘘が丸分かり、フォローする気にもなれない。
 考えが筒抜けで、変態なことを考えてるという偏見も否定できない。
 笑って済む些細な失敗も執着しすぎていつも目の前をチラついて、それを誤魔化す術を知らない。
 惨めな自分なんかに好意を持たれてもお互いに迷惑なだけで、俺なんかが傍にいると君まで汚れるから、どうかせめて幸せになってほしい、自分の関係ないところで、と思って振舞うがそれも理解されない。独りが好きなんだね、じゃあ一生そうしていれば、で片付けられる。
 その努力ももはや空しく思える。いつまでも他人の何気ない一言を気にして、昨日や、ついさっきのことのように耳元で誰かがその一言を連呼して思考が止まる。脂汗が出る。青白くなる。ばれる。またばれる。また一言が来る。
 記憶力だけは無駄にいいのか物覚えはいいのにスピードが遅く要領も悪い、悪口を言った当の本人は忘れていることを、いつまでも引き摺って疎まれる。
 咄嗟に出てくることはいつも妙に見当違いで、周りの白い目にいよいよ慌てて、キモい言動が更に重なる。その記憶がまた堆積して微かなやる気さえ損なわれる。
 押し付けられるポジティブに辟易する、腹の底で憎しみが湧き上がる。
 幸せそうな奴らが憎い、羨ましい、俺もそうなりたい、そうなれるはずだ、そうなるだけの苦労はしたし努力もした、偉そうに。
 楽しそうな笑顔が憎い、空が青いのが憎い、雲がかかってるのが憎い、服のシワが憎い、前髪が憎い、咳が憎い、吃音が憎い、ご飯が憎い、指が憎い、携帯が憎い、その携帯でどうせ俺の悪口を発信してるんだ。その携帯で俺を殴り殺せよ。
 自虐が癖になり過ぎて他人を褒めることも出来ない。そういう言葉を知らない。インチキに聞こえる。
 お世辞でしか褒められたことがないから、自分が言ってもお世辞にしか聞こえない。本当に好きだったのかな、俺は。
 それでも気に障る礼儀とか挨拶がある。しなければ馬鹿にされ嘲られ見下され見限られる。出会い頭の冗談を考えておかないといけない。でもその冗談は絶対に失敗する。
 お世辞を言う。
 笑顔が壊れる。
 そんな奴らの気持ちなんか理解したくない。

 君から貰ったものは全部捨てた。写真も本もセーターも過敏もネックレスも異国の銅貨も。
 重かった。
 頭を愛撫された感触だけは捨てることができない。
 できないできないできないできないできないできない
 できないできないできないできないできないできないできないできないできないできないできないできないでき
ないできないできないできないできないできないできあんできあなきなできなきでなきであんかい
 であきあなkであいkぢえあかんだえきあんであきなできであんkであmできないでかいないできあでなきであきであなきであんでかいであきであんかでkであきあんでかいんだえkだえいだえじであのえあddかえいだえnだえkだいえんだだえきdねあぎいあfえdまjふぇあきであできあんでかいんであであきdなdえあdきあであdかい
であきだにだえkjだいでかぢいであjdふぁいえfじょできあnっであきなきであきであにあいでかんじゃじゃんあななんあなななんあななないないないないにないにあにあにあにあにあにあいにあにあにあにあにいあんいあいないにあないないないないなにあないないないにあぢあえなdけいだんかいでなkぢえあんかいでなきあでなきであんかいdえdかえいんだえいだnでかいなdけいあnであきなきできなkぢえあきであきないできないできなきでいなきできあんできあできなきdえあきできあんかkでなきでn
であきああきいいい
ない
 できない

 林檎を追う。転がる。転校生を強く殴った。廃工場で踏み切りの音がする。耳から排気ガスが漏れる。
 指先から愛液の渇いた匂いがする。誤魔化すための香水がキツい。似たような昼下がりを、あの日の放課後も過ごした。
 家に帰ろう!
 家に帰ろう!
 家に帰ろう!
 家に帰ろう!
 帰れるかなぁ……?
 あの角を曲がらずに。
 案山子と目が合わないように。

 イグアスの滝に身を投げよう
 船に乗るんだ、陸を見送る
 水平線は鯨の背中
 はためくマフラー、薔薇の刺繍
 誰もいない国へいくの
 冬の後ろ髪に別れを告げるよ
 耳たぶ……
 一つだけ嘘をついたんだ
 余計なことを思い出さないように

 「ね、聞いて! 昨日ね! コカ・コーラの瓶で捕まえたの! 妖精!
 蜻蛉みたいな羽でね、おめめが全部黒くて、絹みたいにキラキラ輝いてるの、とっても綺麗」

 いやらしい身体には
 汚物が溜まるだけ
 読みかけの本の文字が
 手錠になってしがみつく
 手が触れる
 気が触れる
 揺れる蝋燭
 暖炉に海の写真
 脳みそから受胎
 死体に花が咲く
 君の腰、青が刺さる
 蚯蚓腫れ、ピエロの歯
 球戯場、若草色、命乞い、上の空……
 手を離して!!
 離してよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!

 世界中の根元で眠るよ
 指笛、飛行機雲
 コンサートはもうすぐ終わる……
 入り江には貝殻と煙草
 無花果が氷結する
 ゴダールのマリア様
 もう口答えするなよ……
 陶器の粉、石灰、それかクラックのライン引き
 グラウンドの白線全てがコカの
 そこをカウボーイが鼻歌交じりに跨ぐのだ
 拍車が鳴った

 And it's okay , you give me everything I need.
 I got a picture , whispers , bad boy , elevator , agitator , New York girl , corkscrew hair.

 「人類で一番最初に歌ったヤツは、まだ言葉も無い頃で、自分の感情をなんと呼ぶかも知らない頃、きっと泣きたかったんだよ。泣きたくなって、それで、歌ったんだよ。きっと。
 それでね……それでね、僕は、今、とても、歌いたい気分なん、だ……」

 「そろそろ大人になれよ、のそろそろっていつ?」
 「さァー、四月とかじゃね」
 「一番無理な時期じゃーん。大体さぁ、だったら免許でも発行すればって思わない?」
 「ああ、いいなそれ。大人免許、結婚免許、子育て免許、あとなんだ、うーん」
 「免許取るための免許」
 「はは」

 正常な人間の想像する狂気は「そいつの中で最も起きてはならないこと」であり、それは時として一般的に狂ってしまったと定義される存在よりも大いに捻じ曲がった、救いがたい狂気の形をとる。
 それが狂った人間には理解できないので、存外狂った人間の狂った様はパンチが足りないというか、お行儀がいいというか、そんなもんかっていう場合が多い。
 狂ってしまった存在は狂ってしまった存在として、観測可能な範囲で規則性を示すので、視認されない範囲でのコンプレックスにこそ抑え難い魅力を持った象徴が現出する。
 フェティシズムはその中でもポピュラーな形だ。しかしそれは下卑た多数の一般人によって、差別化の安心という断罪のもと衆目に晒されてしまった。狂気の中でも贖罪の羊にあてがわれてしまった。
 最も清らかで情欲に満ちたコンプレックスは、古びたアパートの一室で陽が斜めに指すとき再現される。
 怒りと嫉妬がベッドの上で性器を通じて液状化する。シーツに残る。

 吐息と地下鉄の反響が混ざり合う。
 きっと僕は、欲張りなんだろうね。
 吐息と煙草の煙が混ざり合う。
 きっと君は、それが嬉しいんだろうね。
 もし今度生まれ変わったら、連れていってよ。
 どこへでも、どこまでも。
 さぁなら、さぁなら、先生、さぁーなら。

 僕がもうすぐ死ぬとしたら君は優しくしてくれるだろうか、それとも遠ざかるだろうか。遠ざかるだろ見捨てるだろ
 遠ざかるのも優しさ故だろうか。惜しむらくは、きっと僕よりも君の方が死にそうなこと。
 僕は優しく出来るだろうか……。

 発炎筒を振った、月を売った、月を撃った、海を歩いた、手錠をかけた、墓を壊した、金魚の墓を。同情した。

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