Category叫 2/7

紫煙/紫音

 「ジョイントくれよ……」 ヤニで完全にベタついた、ケツの穴より不潔な口で粘着質な音を立てながらタカが言う。 窓に何度も体当りする蛾の羽音がやけに耳障りだ。網戸は埃をかぶってクモの巣が張り、もはやこの部屋に家主はいないと主張するかのよう。 マンションの一階、煎餅布団の上で原因不明の腹痛に悶えながら、俺は枕元に置いたはずの水差しを探す。あるのはひっくり返った灰皿だけ。 部屋の隅でユミは一心不乱に携帯を...

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自我遺漏

 何者でもない人間が自分に名をつけ、仮初めを真実にしていく様はいつか美しくなるもので、力を注ぐに相応しいと思っていた。 だが何者でもない人間は、やはり、何者になることも無いのだと気付いた。 惨めに何者でもないまま、血の通わないお飾りの言葉、見え透いた笑顔、低知能なジョーク、笑われても尚過ちを直せぬ幼稚なプライド。 それでも足さえ引っ張らなければ良いが、ポリシーが無いから意見が変わり、記憶力が無いか...

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ひとごろし

 うだるような暑さ、例年よりも湿気はより濃く、校内で一番大きな桜の下でオオムラがパクってきたセブンスターを吸いながら、俺はテニスコートで揺れるポニーテールを見ていた。 来年踏み切りで、自らの意志により挽き肉に変貌する子だった。ボールがガットに当たる音と、スタンスミスのソールが擦れる音が、かすかに聞こえる。 夏のグラウンドは、小学校高学年で習わされたマーチングの夏季練習を思い出す。 直射日光に金管楽...

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また靄の中

 また君は騙された。 また同じところで間違えた。 君は最高傑作か? 本当にそうか? それならそうと言えばいい。 それならそうと言えばいいさ。 でも君はまた騙される。 また同じところで間違える。 何万回でもすればいい。 数回過ぎて飽きられて。 長い間一人でも彷徨えばいい。 そうして失った自分が、本当の自分だったと気付くまで。 取り戻す戦いなら協力しよう。...

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埋没、懇願、工業的、落涙

 僕のこと、嫌いなら、どうして殺してくれないんですか。 僕のこと、好きなら、どうして抱きしめてくれないんですか。 僕のこと、どうでもいいと思っているなら、どうして無視してくれないんですか。 あなたのそういう、受動的で、保守的で、事なかれなところが、とことん嫌いです。 おぞましいです。汚らわしいです。みすぼらしいです。 一生そうしていればいい。一生そうしていればいい。 「一生そうしていればいい」。...

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