Category叫 2/6

また靄の中

 また君は騙された。 また同じところで間違えた。 君は最高傑作か? 本当にそうか? それならそうと言えばいい。 それならそうと言えばいいさ。 でも君はまた騙される。 また同じところで間違える。 何万回でもすればいい。 数回過ぎて飽きられて。 長い間一人でも彷徨えばいい。 そうして失った自分が、本当の自分だったと気付くまで。 取り戻す戦いなら協力しよう。...

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埋没、懇願、工業的、落涙

 僕のこと、嫌いなら、どうして殺してくれないんですか。 僕のこと、好きなら、どうして抱きしめてくれないんですか。 僕のこと、どうでもいいと思っているなら、どうして無視してくれないんですか。 あなたのそういう、受動的で、保守的で、事なかれなところが、とことん嫌いです。 おぞましいです。汚らわしいです。みすぼらしいです。 一生そうしていればいい。一生そうしていればいい。 「一生そうしていればいい」。...

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筆を折った少年

 血がにじむほど爪を噛むのが癖の、癇癪を持った少年は、 想いを寄せる娘に振り向いて欲しいがためにいつも絵を描いていた。 ある者はすれ違いざまに「くだらない」と言い、ある者は「綺麗な絵だね」と言った。 少年はそのどちらもが嬉しくなかった。 自分の動機が醜いことに、薄々気づいていたからだ。 人生というものの最高の形が銀行員という有り様の田舎で、 なまじ勉強が出来たばかりに少年は神学校で特別な手解きを受...

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グッピーの話

 私はかつて小学校の頃、教室の水槽で泳ぐグッピーのことを考えていました。 綺麗な尾っぽ、透き通る背骨、何を考えているか分からない目玉。 水槽の硝子を叩くとパッと、花火が散るように飛び回るのが好きでした。 あれは魚にはよくないのですよね。 特に飼育係が餌をあげ忘れる、ということも無く只、毎回グッピーは早死にしました。 なのに何故、先生はああも何度も買い直したものか。私には到底理解できませんでした。 ...

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ほぞ

 芋煮や、 ゴミ捨てのルールや、 あいさつ運動や、背の低い花や、 量販店の服や、 誰も出歩かない夜の駅前や、 好きな子の部屋の灯りや、 しけた畑があるだけの小さな山や、 テレビしか話題が無いことや、 切れかけの街灯が、 心底嫌いだった。 本当に嫌いだった。 みんなが不眠症の変態だったらいいのにと望んだ、 身体中に塗りたくったジャム、あとでシーツがべとつくとか、そんなことは考えなかった。 指に付いた...

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